本質を見抜く」「原則がぶれない」―。世界一の投資家ウォーレン・バフェットへの評価は、半世紀にわたる年平均リターン+19.7%という驚異的な結果だけでなく、その“投資哲学”にある。コモンズ投信の渋澤健会長に投資家の視点からその「手法」と「哲学」をひもといてもらう。
片田舎のフツウのおじさん―。ウォーレン・バフェットの偉大な功績を知らずに顔写真だけを見たら、そのような印象しか残らないだろう。確かに今年84歳のバフェットは、生まれ故郷であるアメリカ中西部のネブラスカ州オマハ市郊外の、1958年に31,500ドルで購入した住宅に半世紀以上たった今も住み続けている。
バフェットは、およそ30年間、『フォーブス』誌の長者番付の上位を占め、個人資産の規模は、およそ582億ドル(5兆8,200億円)。でありながら、2006年には生涯370億ドル(3兆7,000億円)の寄付を発表し、最終的には遺産の99%を慈善財団へ寄付する誓約を公にしている。
(中略)「長期投資」こそ、バフェットがバフェットたるゆえんであり、ライオン王バフェットとハゲタカの評価を分ける点である。 バフェットが今も持ち続けているアメリカン・エキスプレス株を買い始めたのは1960年代であると言われている。当時、同社の株式は、詐欺事件との関連や不良債権処理で50%程度下落していたが、実物資産は持たずブランド力があり、かつクレジットカードが 人々の日常生活で使われ始めていたことに着目し、購入したのだ。 確かに半世紀の株式保有は「永遠」ではないかもしれない。しかし、この世の中の現役投資家のなかで、最も年月を誇る長期投資のポジションではないだろうか。
(中略)企業と同じ時間軸に立っているからこそ、ハゲタカのように“ 逃げる” ことのない、威風堂々としたライオン王という評価につながる。バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは1965年以降、年平均+19.7%の運用成績を誇り、過去50年近くにわたり、米主要500銘柄で構成する株価指数のS&P500(年平均+9.8%)を上回る成績を確保してきた。しかしながら、バフェットの偉大さはこの素晴らしい運用実績だけではない。プライベート・エクイティ・ファンドやディストレスト・ファンドのように限られただけがアクセスできるのではなく、米国庶民や世界中の人々を「今日よりもいい明日へ」―という思いへ素朴な長期投資を通じて導いたことにあるのだ。バフェットの格言に次のような言葉がある。
「今日、誰かが木陰でくつろげるのは、昔に誰かが木を植えたからだ」
偶然なのか、必然なのか―。コモンズ投信のウェブサイトにある映像には、バフェットのこの言葉が完全にシンクロしている。我々もまた、バフェットとともに “投資の王道” を歩んでいきたいと思っている。