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2022.05.21 17:00

人的資本経営の新潮流・現代版「人をつくる」とは何か

Forbes JAPAN編集部

増すCHRO、HRBPの重要性


人的資本経営を行ううえで、企業理念やパーパス、経営戦略と連動した人材戦略の策定、実行が重要となる。その役割を担うのが、CHROだ。CEO、CFOなど経営陣との連携、従業員や投資家に人材戦略を発信し、対話する役割を担う。

「強いコーポレート」と「強いビジネス」の両輪が「強い経営」と論じる、前述の日置は、コーポレートの中核としてファイナンスとともにHRをあげる。そして「機能戦略の1つとしての人事戦略はあり続けるが、企業戦略のコアとして人材戦略が位置付けられるようになった。制度の番人とも言われてきた『人事屋』の延長線上にはないため、CEOと同じ企業戦略目線を持つCHROの重要性は増している」と話す。

では、優れたCHROの条件とは何か。米マーサーは、グローバル競争に打ち勝つCHROに求められる5つの特性をあげている。1 Listener(よい聴き手)であること、2 Cultivator(カルチャーを植え付け、育む人)であること、3 Storyteller(物語の語り手)であること、4 Activator(人事機能を活性化する人)であること、5 Transformer(変革者)であること──の5つだ。

また、日本CHRO協会専務理事の谷口宏は次のように指摘する。「経営と人事の連動は、HRBP(人事ビジネスパートナー)がないと機能しない。FP&A(ファイナンシャルプランニング&アナリシス)と呼ばれる財務人材が事業部門の『参謀』として機能している例が出てきているように、HRBPが『参謀』になり、事業戦略を人事の側面から支援する必要がある。HRBPの強化も重要だ」。

人的資本経営の流れは間違いなく前進している。だからこそ、理想とのギャップが生まれているのがいまだ。不確実性が高く、事業戦略の変化が加速するなかで、育成を含めた人の変化はどうしても遅行してしまうからだ。だからこそ、戦略や組織を従わせるかもしれない、人的資本の価値を高める「現代版『人をつくる(パナソニック創業者・松下幸之助)』」戦略の実効性が企業の未来を占う試金石になる。

文=フォーブスジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.094 2022年月6号(2022/4/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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