ビジネス

2022.05.21 16:30

海外売上比率7割のテルモCHROが語るグローバル人事戦略

Forbes JAPAN編集部

グロースマインドセットの醸成


──ほかの施策は。

西川:グローバルの観点では、グローバルリーダー育成のほか、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に取り組んでいる。

変革の観点も重視している。22年4月から始動する5カ年成長戦略「GS26」で掲げている「デバイスからソリューションへ」に向かってビジネスモデルを変革するには、新しいスキルの取り込みが必要だ。しかし、これまではスキルの話をしてこなかった。GS26ではデジタル人材を増やすことを掲げたが、デジタルに限らず、すべての事業で必要なスキルを示していく。

変革にはグロースマインドセットの醸成も大切だ。例えば英語が話せないとき、「自分には無理」と考えるのはフィックスドマインドセット。一方、「まだ話せないが、経験や努力で話せるようになる」と考えるのがグロースマインドセットだ。グローバルの部長層600人に、グロースマインドセットを日々の仕事上の習慣にどう落とし込むのか、これから議論してもらうところだ。

──グローバル人事の体制は。

西川:本社にグローバル人事部をつくったが、ここはプロジェクトマネジメントの組織で、施策そのものはCoE(センター・オブ・エクスパティーズ)が担う。CoEは、各社のCHROや人事部長からボランティアで人を募り、自分の時間の10〜15%を使って施策を進めてもらう。「ワークフォースプランニング」「モビリティ(国境を越えた異動)」「タレントマネジメント」など計6つのチームがあり、総勢60〜70人が参加している。

──そのときリーダーとしてCHROに求められるものは。

西川:テルモのCoEはカチッとした組織ではないため危さを感じる人もいるだろう。ただ、メンバーのパッションは高い。その思いを裏切らないよう、CHROは「この会社をいい会社にしよう」と夢を語ることが大切だ。人がやる気になって、自分らしく生きることを実現することが人事のコアテーマ。私自身、そのテーマに取り組むことに面白さを感じている。それをシャイにならずに伝えていきたい。

西川恭◎テルモ取締役 常務経営役員 チーフヒューマンリソースオフィサー(CHRO)。東京大学法学部卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)を経て、2010年4月、テルモ入社。テルモヨーロッパ社取締役社長などを歴任し、19年6月より現職。

文=村上 敬 写真=ヤン ブース

この記事は 「Forbes JAPAN No.094 2022年月6号(2022/4/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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