──先行配信での手応えは?
和田:Netflixで配信した直後に国内映画ランキングで1位を獲得し、グローバルでの映画ランキングでも4位に入りました。自分たちのつくったものが、日本でも世界でも一定層に受け入れられたのが実績として出た。手応えはありました。
荒木:僕はどちらかと言うと、ほっとしました。WIT STUDIO的には同じタイミングで「SPY×FAMILY」もNetflixのランキングに入っていて、盛り上がっていましたよね。
──劇場ではどんな「体験」ができるのか?
荒木:基本的に僕たちは、コンテの段階から大きなスクリーンで見ることを前提につくっています。「バブル」では、特にライブ感を出す演出を意識しました。
例えば、東京の街中を主人公たちがビルの上から飛びまわっているシーンは、MX4D等で見ると「危ない」と思うくらい。ドローンで東京上空を撮影して緻密につくったので迫力があるはず。「ストーリーを知ったらそれでおしまい」にならないよう、劇場での「体験」を重視しました。
作業の様子を見せてくれた荒木監督。「バブル」では、「Storyboard Pro」というソフトを使った「ムービーコンテ」を採用した
和田:音響がいい環境で見ると視聴体験が大きく変わってきますからね。「バブル」は青春ラブストーリーではありながら、これまでわれわれが培ってきたアクションシーンの経験を惜しげもなく投入しています。
これからの10年に必要な「変化」
──WIT STUDIOは設立10年を迎えましたが、どんな変化がありましたか。
和田:この10年で何もかもが変わりました。NetflixやAmazon prime、huluにDisney+というプラットフォームができたことによって、アニメーションの露出場所も需要も飛躍的に増え、イメージも変わったと思います。
これは日本のアニメーションが、世界で日常的に見られる状態になったことを意味します。そのため、いまでは、グローバルなプラットフォームに配信する際に、海外のユーザーを意図的に狙うということはなくなりました。「バブル」は海外ユーザーからも多くの反響がありましたが、「DEAT NOTE」で高い支持を集めた小畑健さんのキャラクターも理由の1つだと思います。ニーズを意識したわけではなく、自分たちの選択が自然と受け入れられた結果かなと。
(c)2022「バブル」製作委員会
「鬼滅の刃」や「僕のヒーローアカデミア」など、アメリカで劇場公開されるアニメ作品も増えてきました。今後はもっと日本のアニメーションが世界で見られる状況が増えると思います。
荒木:アニメ業界のみんなで牙城を崩している感じですよね。
和田:やっとディズニーさんやピクサーさんと戦える時代になってきた。その中で、次の10年に向けての課題も見つかりました。