ビジネス

2022.05.19

企業カルチャー作りで重要な3つの原則


ミッションステートメントは明確かつ客観的であるべき


当たり前のように思えるかもしれませんが、驚くほど多くの企業が漠然としたミッションステートメントを作り、失敗しています。「世の中の意識を向上させる」など、具体的な行動に結びつかないようなステートメントにしてしまっているのです。

一方で、良いミッションステートメントはまるで北極星のように企業の方向性を明確かつ効果的に示すものです。例えば、Teslaのミッションは「世界の持続可能エネルギーへのシフトを加速する」です。他にも、Googleのミッションは「世界の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」、IKEAのミッションは「優れたデザインと機能性を兼ね備えたホームファニッシング製品を幅広く取りそろえ、より多くの方々にご購入いただけるようできる限り手ごろな価格でご提供すること」です。どれも非常に具体的で実用的です。

Coralの以前のミッションはこのような具体性や実用性が欠けていたので、変える必要がありました

バリューはキャッチーであるべき


Googleの「Don’t be Evil(邪悪になるな)」というモットーを覚えている人は多いと思います。では、他のバリューやモットーはどうでしょうか。思い出せるものはありますか? ちなみに「Don’t be Evil」は公式のバリューではなく、従業員のPaul Buchheit氏が2001年のとあるミーティングで企業バリューの候補として提案したフレーズだったそうです。しかし、あまりにもキャッチーであったため、社内で繰り返し使われるようになり、ついにはIPOの目論見書にも書かれたというわけです。

バリューは必ずしも個性的である必要はありませんが、人に覚えてもらえるくらいキャッチーではあるべきでしょう。例えばCoralでは、個人の活躍ばかりが脚光を浴びがちなVC業界の中で、チームワークを重視することが優位性に結びつくと考えています。しかし、私たちのバリューは「チームワーク」ではなく、「Play Jazz:ジャズセッションのように」です。

ジャズのジャムセッションでは、お互いに合わせながらも、自分の個性を発揮することが大事です。スタイルやペースなどはリーダーが決めるかもしれませんが、それぞれのパフォーマーが自分のテクニックや楽器の魅力を最大限に引き出した演奏ができるように、基本的には彼らの独自性に任せます。各メンバーのソロパートでは、ソロの魅力を引き立たせるために、残りのメンバーはバックグラウンドの演奏でサポートします。Coralでは、チームワークにおいてこのような即興や協調を大切にしています。それぞれ1人で演奏はできるでしょう。でも一緒にやる。それがジャズです。

このバリューは言葉や表現自体が個性的で、わかりやすいイメージを思い起こさせることもあってキャッチーです。私たちも、自然とこのバリューを一番よく引用するようになりました。1日に数回は使っているかもしれません。「OK、ここはプレイジャズで行こう」とか、「ナイスジャズだったね!」など、日常的に出てきます。

また、あえて個性的な表現にしたことで、社内の人間にだけわかる言い回しが生まれたというメリットもありました。これが予想外に良い効果をもたらしているのです。Coral関係者とそれ以外との境目が自然とはっきりして、内輪の結束が強くなり、仲間意識を高めることにつながっています。
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文=James Riney

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