ビジネス

2022.05.19

企業カルチャー作りで重要な3つの原則

以前にも書いたように、スタートアップの成長は主に「プロダクト構築ステージ」、「ビジネス構築ステージ」、「組織構築ステージ」の3つのステージに分けられます。

特に最後のステージでは、経営陣がどのような自社カルチャーを育てるかによって、企業の行動基盤となる「OS」的な存在となって、その先、何年も影響してきます。

ユヴァル・ノア・ハラリの著書「サピエンス全史」によると、人類が他の種や生物を押しのけて地球の頂点に立つことができたのは「認知革命」のおかげだといいます。

「認知革命」とは人類が言語や信仰を使って「虚構を共有する」能力を身につけた過程のことですが、同じ方向性や信仰というある種の「虚構」を共有できるようになったおかげで、人類は見知らぬ他人同士でも大人数で団結して行動できるようになりました。

例えば、初対面で出身地も全然違う相手でも、同じ仏教徒であれば、「同じ教典を読み、実質同じ行動倫理や体制を共有している」という認識のもと協調できるのです。

同じことが組織に対しても言えます。ビジョンやミッション、バリューは組織の目標や取るべき行動を示す「教典」のようなものです。

これらがよく考えられているスタートアップは、明らかに違いがわかります。メンバー全員が企業のブランドイメージに概ね沿った行動を取っていて、対外的にも内部的にも組織全体のベクトルがそろっているのです。いわゆる「強固なカルチャー」というものです。

そしてこのような統一性のある「OS」が確立されていれば、事業をスケールしても効率的な運営を維持できるようになります。

カルチャー形成に関して私はもちろん専門家ではありませんが、私自身が経営しているCoral Capitalの組織作りという点で普段から強く意識していることではあります。

ベンチャーキャピタルというビジネスでも、やはり強固なカルチャーを持っているファームのほうが長期的に成功しています。

Sequoiaが最も良い例かもしれません。同ファームでマネージング・パートナーとして長年活躍してきたMichael Moritz氏も、「ベンチャービジネスについて語るとき、誰もが投資先のスタートアップのことばかり書きますが、最大の投資先であるはずの自分たちのビジネスについては誰も書かないのです」と述べています。

このことを胸に、私もCoralのミッションやバリューを考えるのに時間をかけ、さらにそれが本当にベストかどうか常に問い続けるようにしてきました。私たちが最近ミッションステートメントを変えることになったのも、このこだわりが原因です。以前のものは方向性が合っていないことに気づいたため、一から作り直したのです。

その作り直しの中で、ミッションやバリューを考えるときに重要なポイントをいくつか絞り込めましたので、今回ご紹介したいと思います。組織作りに取り組んでいる方々のご参考になれば幸いです。
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文=James Riney

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