2021年12月期、カゴメは国際事業が大幅増益となり、連結で増収増益を達成した。好調な国際事業を支えているのは人事戦略だ。同社は13年から国内外共通のジョブ型制度「グローバル・ジョブ・グレード」を導入。仕掛人は、CHO(最高人事責任者)の有沢正人。カゴメはジョブ型のほかにも先進的な人事制度を導入している。その狙いを聞いた。
──CHOの役割は何か。
有沢:誤解を恐れずに言うと、従来の人事担当役員は人事部長よりはんこがひとつ大きいだけの人だった。一方、CHOは経営課題を解決する経営メンバーのひとりであり、社長のエグゼクティブコンサルタント。経営課題を解決するために、組織のカルチャーを変える必要がある。その役割を担うゲームチェンジャーがCHOだ。
──カゴメの経営課題は何だったのか。
有沢:12年の入社時、当時の社長から「グローバル化したい。まず人事から」と言われた。当時の海外売上比率は10%弱。国内の少子高齢化を考えると海外事業の強化は必須だったが、各地の経営はローカルに任せっきりで、何をやっているのか見えていない部分があった。人事から改革することになり、HOYAでグローバル人事制度を統一した経験のある私に白羽の矢が立った。
──まずジョブ型を導入した。
有沢:人ではなく仕事にお金を払うことがジョブ型の本質だ。評価と報酬制度は従来のままで、ジョブディスクリプションだけをつくってジョブ型だと考えるのは間違い。カゴメでは、あえてジョブディスクリプションはつくらなかった。職務ごとにKPI評価が行われていて、やるべきことは目標シートに書かれている。
──ジョブ型導入のコツは何か。
有沢:入社時に社長に「カゴメはスーパーオールドファッションド・ジャパニーズ・トラディショナル・コンサバティブ・カンパニーだ」と訴えた。まずこのカルチャーを変えないとジョブ型は機能しない。
カルチャーを変革するには、経営陣のコミットメントが大切だ。当時の社長には「共犯になってください」とお願いした。すると13年からの中期経営計画「Next50」で、重要な経営戦略のひとつに「グローバル人事の導入」を位置づけてくれた。「人事はただのオペレーション」と考えていた従業員は相当驚いたはずだ。
ジョブ型導入も役員からで、翌年は部長、次は課長と、上からカスケード方式で広げていった。ジョブ型を従業員から導入するところもあるが、それはひきょうではないかと考えている。上が変わらなければ組織のカルチャーは変わらない。
──下から入れるから、「ジョブ型は人件費削減のため」と誤解される。
有沢:私は人件費という言葉が嫌いだ。人は資産ではなくて資本。資産と考えると費用がコストになるが、資本なのでインベスト。ジョブ型も、人に一律ではなく傾斜をつけて投資する制度と考えるべき。また、投資なので人事の仕事に携わるメンバーには財務の知識も必要。財務の知識に欠けると、人的資本の本質がわからないのではないか。