実効性を重んじる風土
──経営戦略と人材戦略はどのように位置付けているか。
22年2月に発表した「中長期経営方針」のなかで、コア戦略である「サステナビリティ」「DX」「R&D」の推進、また、事業ポートフォリオ戦略を実行するうえでの「戦略基盤」と位置付けた。私の気持ちとしては、経営戦略の下に人材戦略があるのではなく、横の関係だ。
人材戦略は「ありたい企業風土の醸成」「持続的、継続的な経営者育成」「新たなケイパビリティ(能力)の獲得」。この3つをトライアングルで考えている。
──取締役会スキルマトリックスも公開している。
取締役会のスキルマトリックスを社外に公表し、そして20年にはCXOのスキルセットも定義した。ただ、それらがあれば適切な選任ができるという簡単なものではない。まだこれからだが、監督である取締役会の実効性を上げると、経営の執行側も強靭になる。そして社員も、三位一体で強靭になる。その出発点がガバナンスの起点である取締役会の実効性の向上だ。
グローバルのタレントマネジメントの構築も、21年にグループCEO、業務執行取締役、CXO、地域統括会社CEOが一堂に会したグローバルタレントレビューをはじめて行った。22年4月には、グローバルで各地の人事部長クラスが集う人事部門のタウンホールを行うことも始めた。
──「実効性」という言葉が多いが、こだわりがあるか。
当グループには、昔から実効性を重んじる風土がある。実効性を上げるために、自ずと自らが鍛えられ、かつ、成長実感を得やすい。人材戦略も同様だ。戦略の実効性を上げていくか、が勝負だ。「理念の具現化」し続けなければいけない。すぐに実現できなくても発信し続けることが大事だ。CHROという立場は、そこから逃げてはいけない。実効性をスピーディに上げていく力はケイパビリティだ。それが組織にも社員にも備わってきたら、変化の激しいこれからの時代にいいのではないか。
谷村圭造◎アサヒグループホールディングス取締役兼執行役員CHRO。1989年に同社に入社。2014年人事部門ゼネラルマネジャーに就任、18年、執行役員グローカルタレントマネジメント担当を経て、19年に取締役兼執行役員、20年より現職。