ビジネス

2022.05.20 08:00

ゴミ削減率93% ゼロウェイストへの挑戦が実は経済的である理由


カトラリーは、銃弾の空薬莢(からやっきょう)を再利用した真鍮で作っていたり、ユニフォームは、性産業で働いていた女性たちが自立できるように職業訓練を行っているNGOによって、通常の衣服を製作するときに余ってしまう布を再活用して作られている。

「こうした社会課題の解決を意識し、かつ創造的な人々やプロジェクトとのコラボレイトは、ゼロウェイストを掲げていなければなし得なかったと思います。互いにアイデアを出し合いブラッシュアップしていく中で、単なる受発注の関係ではなく、同じ方向性を歩む同志となり、フラットな関係性を育めたことが、何よりの宝となりました」

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銃弾の空薬莢を美しいカトラリーへとアップサイクルしたAndkow&Coのプロダクト

コストよりメリットが大きい


このように、ゼロウェイストだからこそ生み出されたクリエイティビティは目を見張るものがあるが、コストや経済的なメリットが気になるところだ。

その点を久保田氏は、「お店の建設費用などの初期投資については、通常よりも10%ほどコストダウンすることに成功しました。Less is moreじゃないですが、環境負荷を下げようとすると、要素をなるべく削ぎ落とし、シンプルにしようという意識が働きます。結果的にはコストを抑えることにも繋がるんです」と話す。

ゼロウェイストを高いレベルで実現するため、2人の専任メンバーと、ゴミを運ぶドライバーが必要となり、人件費に関しては余分にかかる。しかしながら、多くのお客さんがゼロウェイストのことをSNSで発信してくれたり、お店のレビューでコメントしてくれたりと、広告宣伝費をかけずに集客を促進できたことで、人件費アップ以上のメリットを感じているという。

「コロナ禍のオープンということもあり、集客には苦労すると腹を括っていました。また、(本社のある)ベトナムも強烈なロックダウンで厳しい状況にあったので、予算も限られていました。それでも、グランドオープンから1カ月目には、旅行者もまったくいない状況の中、コロナ前に設定した売り上げ目標の117%を実現させることができました」

一番大きかったのは、お店作りに関わってくれた人たちが、ゼロウェイストのコンセプトを口コミやSNSで伝えてくれたこと。もともと情報感度が高く、アーリーアダプター層のネットワークを持っていたため、インフルエンサーとして機能したのだ。また、コンセプトに興味を持ったイギリスやイタリアなど、世界のメディアからの問い合わせがあり、国境を超えた露出にも繋がった。

さて、肝心のゼロウェイストの達成率は、現在93.8%を実現。1カ月に2300kg強のゴミがリサイクルされ、埋立地にいかずに済んでいる。
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文=国府田淳

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