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2022.05.20

ゴミ削減率93% ゼロウェイストへの挑戦が実は経済的である理由


ゼロウェイストを実現するために肝となるのは、ゴミの分別だ。久保田氏が分別について研究を重ねたところ、ゼロウェイストを高いレベルで達成するには、なんと20種類に分別する必要があることが判明した。もちろんそのために、広大なスペースを確保しなければならず、店にはリサイクルルームなるものが必要となる。

通常のレストランでは、ゴミのスペースは直接利益を生み出さないため、なるべく最小面積で済ますことが鉄則。少しでも客席を増やしたい、というのが本音のところだ。

この問題を解決するために久保田氏は、「せっかくゼロウェイストの店舗を作るのだから、リサイクルルームはむしろメインに据え、お客さまに一番見えるところに配置すれば良いのでは?」と思い立ち、大胆にもお客さんがお店に入って一番最初に通る通路沿いに、リサイクルルームを配置した。


リサイクルルームの様子。ゴミ置場とは思えない美しくクリエイティブな空間

「ゴミ置場を店内に持ってくること自体ご法度ですし、それをお店の入り口に持ってくるということで、正直お客さんの反応が心配でした。しかし、お客さんはむしろ好意的で、興味深く立ち止まって見学したり、SNSに写真をアップするなど、思った以上の反響がありました。スタッフもお客さんに見られているということで、リサイクルの精度も上がり、結果的にはかなり良かったと思います」

90%以上のゴミを削減


分別されたゴミは、ゴミの特性ごとに再活用される。生ゴミはブラックソルジャーフライというハエの幼虫の餌にし、その幼虫は乾燥させて、魚やエビの餌として利用。廃棄ピザ生地はコオロギの餌に、貝殻やカニ殻、卵の殻は鶏の餌にと、それぞれが循環するように配慮している。

また、それらの餌で育ったコオロギやケージフリーの鳥の卵、そして、傷んでしまって廃棄せざるを得ない有機ルッコラを餌として与えた魚をトッピングした、循環型のスペシャルピザを展開。通常は捨てられるオレンジやライムなどの柑橘類の皮を乾燥させたハーブティなども提供されている。

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通常、平日に約60kg、週末に約120kgに出るゴミを、リサイクルと分別によって平日約4kg、週末は約8kgにまで減らすことに成功

こうした数々の取り組みを聞くと、一つ一つのモノ・コトに対して、様々な可能性を追求している姿が垣間見られ、高いレベルでクリエイティビティが発揮されていることに驚く。

「カンボジアに来たばかりの頃は、ゼロウェイストのコンセプトを掲げたものの、実際にどこまでできるのか不安でいっぱいでした。でも、コンセプトの実現に向かって突き進んでいくうちに、現地で様々なサーキュラーエコノミーを実践する人々に出会い、その高い創造性に感銘を受けました」
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文=国府田淳

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