世界保健デーに合わせてツイッターにそう投稿し、「世界最大のヘルスケア計画であるアユシュマン・バラットがインドで進められているのを、全国民が誇りに思っている」とも言及した。
アユシュマン・バラットは、低所得者も医療を利用できるようにインド政府が導入した公的医療保険基金プログラムだ。その一環で、妊産婦医療から予防接種、遠隔診療、ヨガ、健康啓発教育、調剤まで、さまざまな医療サービスを提供する「ヘルス・ウェルネス・センター」を全国に15万カ所整備することなども計画されている。
必須の医療サービスと一般的な予防ケアの両面で国民に広範なセーフティーネットを用意する狙いがある。政府には巨額の財政負担が生じるとみられるが、大半の専門家はインドにとって価値のある投資と考えている。
インドの医療制度はこれまで、1人あたりの医療支出が比較的少ないわりに世界的にも優れた成果を収めてきた実績がある。ハーバード公衆衛生大学院の報告書によると、インドの1人あたり医療支出は年間わずか40ドル(約5200円)ほどで、米国の約8500ドル(約110万円)などと比べると桁違いに少ない。それでいて医療の成績は他国に引けを取らないものになっている。
歴史的に見れば、インドはかねて医薬品製造の中心地となってきた。筆者も以前から論じてきたとおり、世界の薬やワクチンの半分以上はインドで生産されている。さらに、インドは医薬品の研究開発などでも世界をリードしていて、国際的なライフサイエンス企業から熱い視線を浴びる投資先にもなっている。
インドは近年、公衆衛生に関する取り組みにも力を入れている。新型コロナウイルス感染症対策でも、世界でいち早く強力なワクチン接種キャンペーンを実施した国のひとつであり、他国へのワクチン供与も早くから行ってきた。
最後に、インドの医療部門のイノベーションは間違いなく最盛期を迎えている。たとえばインドの遠隔診療市場の年平均成長率は36.9%に達する。農村部を中心に深刻な医師不足が続くなか、政府が遠隔診療サービスに投資していることなどが背景にある。アポロをはじめとする大手医療機関やタタのような大財閥がこうした動きを先導しており、他の業界大手に見本を示すかたちにもなっている。モディは一方で、最先端の設備を整えた医学部を全国に新設している。
インドの医療制度はこの10年で確実に大きく進歩した。政府が国民に世界有数の医療インフラやサービスを提供する努力を続けるなか、インドの医療制度が今後いちだんと注目され、他国から参考にされるようになるのは間違いないだろう。