検査もワクチンも側近が独占、北朝鮮コロナ深刻な背景

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「コロナ清浄国」だったはずの北朝鮮が12日、「平壌の団体で8日、新型コロナウイルスのオミクロン株に感染した人が確認された」と発表した。感染が広がっている模様で、18日の朝鮮中央通信は「15日午後6時まで、発熱者が171万5950人余りで、死者62人」と伝えた。12日からは全国で厳格な隔離措置(ロックダウン)が始まった。

韓国政府関係者によれば、北朝鮮が現在確保しているPCR検査キットは最大で10万回分しかない。過去2年間余で実施した検査も10万回程度だという。厚生省のホームページによれば、日本では現在、1日あたり40万回以上のPCR検査が行われている。北朝鮮が「発熱者」と表現しているのは、PCR検査ができないため、熱が出た人を片端から、「コロナ感染の疑いがある人」としているからだろう。

初めて感染者が見つかったのも「平壌の団体」。韓国政府関係者は「PCR検査を受けられる人にまで感染が及んだという意味」と語る。この関係者によれば、平壌の朝鮮労働党や軍、政府の幹部は3千人ほど。金正恩総書記を支える核心層の人々で、現在保有している10万回分の検査キットも、彼らに優先的に分配することになる。地方はいつまで経っても、検査できないから、無症状であろうがなかろうが、人々を隔離するしかない。

韓国の国防研究院(KIDA)で長年、北朝鮮問題を研究した金振武・韓国淑明女子大国際関係大学院教授は研究の一環として50人以上の脱北者と面会した経験がある。金教授はその経験をもとに、「今回の事態は非常に深刻だ。北朝鮮の保健医療分野のインフラが非常に劣悪だからだ」と指摘する。

今回、北朝鮮は8日に初めてコロナウイルス感染の事実を確認したにもかかわらず、発表は12日にずれ込んだ。金正恩総書記が緊急の政治局会議を開いたのは12日未明だったようだ。韓国政府は、金正恩氏がコロナ感染事態の報告を受けたのは、政治局会議の直前だったとみている。ところが、13日の朝鮮中央通信は「4月末から感染が爆発的に拡大し、18万7800人が隔離および治療を受けた」と伝えた。なぜ、18万人以上に症状が出ている時点まで、金正恩氏は事態を把握できなかったのか。
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文=牧野愛博

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