グーグル、フェイスブック、インスタグラム、ツイッターなど、ウェブの巨大情報プラットフォームには、すべてアルゴリズムが導入されている。ここでいうアルゴリズムとは、「誰にどの情報を届けるか」を決定するルール(より正確には計算手順)のことだ。
各ユーザーにより有益(だと感じてもらえるよう)な投稿やウェブページなどの情報を届けるために、ルールに基づき、各情報の届きやすさがスコアリング(ユーザーの属性や行動を点数化し重要度を評価)される。
「アルゴリズム公開」が意味するもの
例えばグーグルでは、あるキーワードで検索されたときに表示される結果の順番は、その検索したユーザーにとって最も有益であるとアルゴリズムが判断したものから順に並ぶようになっている。
これはツイッターでも同じことで、投稿されたツイートが得ている反応、ツイートの内容の話題性、投稿からの経過時間、投稿者と投稿閲覧者の関係性、ネガティブな反応をどれだけ受けているかなどさまざまな要素がアルゴリズムという名のルールに基づいて評価され、投稿閲覧者のツイッターのタイムライン上でツイートの表示順位が決定する。
ただしルールの正確な内容は、どのプラットフォーマーも外部からは窺い知れないブラックボックスにしている。これは当然の措置だろう。プラットフォーマーはユーザー獲得のためにはユーザーベネフィットを最大化する必要がある。そのためにアルゴリズムを決定している。なので、その内容が筒抜けになり、裏をかかれる形でハックされると、元々のプラットフォーマーの意図が台無しにされるおそれがあるからだ。
有益性ではなく、上手にアルゴリズムをハックしたスパム情報ばかりがプラットフォームにあふれると、ユーザーが逃げてしまう。実際にそのようなハックは何度も行われていて、それを察知するたびにどのプラットフォーマーもアルゴリズムを改変して「穴」をふさいできた。
そんな世の中でアルゴリズムを公開してしまうと、当然アルゴリズムハックが横行する。言ってみれば「脱法者の天国」になるわけだ。
では、「アルゴリズムの公開」を宣言するイーロン・マスクは、そのような事態が望ましいと言っているのだろうか?
おそらくそうではないだろう。完全に公開するということは、脱法的な行為を行っている者の脱法性をも白日のもとに晒されるということなのだ。
つまり、ユーザー同士の相互監視のメカニズムが働けば、例えばアルゴリズムハックでより多くの露出を狙っても、フォローを外されたり、スパム報告をされたりすることで、狙ったのとは逆にアルゴリズム的な低評価をもらうリスクもあり得る。そのような状況になれば、公開したほうがむしろ安全だというわけだ。