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2022.05.18

スタートアップの海外展開で必要な心構えとは キリロムフォーラムで語られたヒント

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最初に、国内のアーリーステージのスタートアップ投資を行う、デライト・ベンチャーズの渡辺大氏は、「グーグルやフェイスブックなどが日常生活に大きな影響を及ぼしているように、世界の経済はスタートアップエコシステムが牽引しています。しかし、日本の時価総額トップ50社には長らくそういった企業がランクインしておらず、世界において日本のスタートアップエコシステムの存在感はない」と問題提起。

それには、3点が原因として存在するという。

一つは、日本はそもそも起業がしにくいため、スタートアップの母数が少ないこと。二つ目は起業後も業界や投資の規制によって成長を妨げる障害が多いこと。さらに、上場が簡単かつ国内経済が大きいために海外に出ていこうとする意志を持ちにくいことから、成功とされる事業規模が小さいことだ。

渡辺氏は、「欧米で成功したスタートアップエコシステムから得られる学びを日本にも導入すべき」と話した。

日本や韓国で投資活動を行うPKSHA Capitalの海老原秀幸氏は、「エンタメ事業などをグローバルに展開している韓国は、政府がベンチャー支援の取り組みに力を入れています。日本の場合は政府の関与がかなり弱く、それが現状につながっているのでは」と指摘。

一方で、「経産省からはいろいろな提案が出ているので、期待はしています」とも述べた。

課題がいくつも浮かび上がったが、ベンチャーキャピタル(VC)のスタートアップへの投資額は年々上がっている。渡辺氏も、この現状については決して後ろ向きではない。

投資資金が、欧米の次にアジアへ流れるという傾向を踏まえたうえで、「アジアで日本を無視することはあり得ません。レイターステージから始まり、ミドル、アーリーに海外資金が入るのも時間の問題。日本としても、それが滞らないよう、投資環境を整えていくことが重要です」と話す。

東京理科大学でVCの運営などを手掛ける、東京理科大学イノベーション・キャピタルの片寄裕市氏も、「海外のVCと組んだスタートアップは一気にグローバル展開するサポートが得られた」と振り返る。そして「海外に売っていくという状況をつくり出すには、やはり海外のVCからも積極的に資金を募り、成長を加速させることが大事」と語った。

文=三ツ井香菜 編集=露原直人

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