株式投資で富を得た人はほんの一握り
2012年、ドイツで百万長者472人を対象にした科学的調査の結果が発表された。それによると、472人のうち株式投資で財をなした人はわずか2.4パーセントしかおらず、不動産投資で資産を築いたのは10人に1人である。その一方で、フォーブスの長者番付と同様、大半が起業家だった。
この結果を見て、ドイツでは株式投資という文化がまだ発展途上にあるからだと考える人もいるだろう。しかし、ドイツよりもはるかに株式投資が一般に浸透しているアメリカでも状況はなんら変わらない。
トマス・スタンリーがアメリカの百万長者733人に聞き取り調査をしたところ、自らの経済的成功に「株」が重要な役割を果たしていると答えたのは、わずか12パーセントだった。スタンリーが調査を行ったのは1990年代後半、アメリカのみならず世界中の株式市場がかつてないほど活況を呈していた時期である。にもかかわらず、12パーセントしかいなかったのだ。
スタンリーは、百万長者の多くが株式投資を行ってはいるが、彼らが富を築いたのは起業家や自営の専門家、企業の経営幹部としてだと結論づけた。
筆者Rainer Zitelmannが自著『The Wealth Elite(『富豪エリート 〜スーパーリッチたちの心理学』、LID Publishing刊、日本未訳)』を著すにあたって、1億から数十億ドルの純資産を有するドイツの億万長者45人に、徹底的な聞き取り調査を行った。結果、45人中ほとんどが一代で財をなした起業家であり、株で富豪の地位を得た人はひとりもいなかった。
アセットクラス(資産クラス)の中で、株式は不動産と並んで、富を「維持する」のにきわめて有効な手段であり、投資ポートフォリオの主要な要素であることはまちがいない。だが、富を「築く」最善の手段は何か。それは起業家になることである。