彼は、最も求められるスキルについて「本質的な知識」だと語る。
チームのメンバーはIT、建築、製造など異なる専門性をもつ。エコシステムの観点から、いかに異分野の企業が補完し合えるのか、新しいビジネスをつくり出せるのか、どのような技術ソルーションがインフラに統合しうるのかを考えなければならない。
90年代、人間の思考や行動に興味を持ち、ヘルシンキ大学で当時はマイナーだった認知科学を習得し、多くの若きテックの才能が集まる前衛的なIT企業、Satama Interactiveで働き始める。その後ノキアで10年、プロダクトマネジャーとしてUIとUXの分野で専門性を発揮し、より人間の実生活や社会とテクノロジーが交わる分野にかかわりたいと、スマートシティ分野に進んだ。
再婚した夫と4人の子どもを育てながらのキャリア。ノキア時代は子どもたちの幼いころと重なったが、それほど苦ではなかった。
「ノキアは、世界でも先駆けて新しい働き方をつくったグローバル企業。いまは珍しくないが、同僚は世界中にいて、家からのリモートワークも普通だった。世界中の優秀な人たちと仕事するのも楽しかった」
ヘルシンキ市のスマートシティ開発プロジェクトの責任者を務めたのち、オーストラリアの企業にヘッドハンティングされた。家族で移住したが、たった1年で戻る。想像していたよりも階級社会で保守的な職場文化だった。あらためて彼女は気付いたという。
いまは、ヘルシンキで多様な人材が才能を発揮するための職場文化の構築を含めたマネジメントにも面白みを感じる。
「新しいことをしたい、新しいことを学びたい。これまでにないまったく新しいものをつくる自由が欲しい」。それが彼女の仕事への動機だ。