フィンランド発フードデリバリーアプリ「Wolt」(21年米DoorDashが約9000億円で買収)は、急速な移民流入と彼らへの社会の冷待遇を敏感に察知して成功したと話す。「それらは、社会の変化で起こるんだ。ビジネスは時に、社会から疎外されたり、過小評価されている人たちに焦点を当てることでつくることができる」
テクノロジーで新しい社会をつくる、ある種の「社会エンジニア」だと思うか? との質問には、こう答える。
「僕は単にテクノロジーが好きなだけなんだけど、テクノロジーを実際に使ってもらうには、人々に受け入れられなければならない。でも、アメリカ人がいつも言っている“デマンド”って言うのとは、少し違うと思う。
僕たちはもっと先を見通した……例えば、これ、知ってる? 僕は自分の子どもたちの話から知ったんだけど、いま、アメリカ人の10代の女の子の3割は、自分を“女の子”として見られなくないんだ。“男の子”としても見られたくない。“ノン・バイナリー(境界なし)”として見られたいんだ。
それを知って、これまでとは違った動きが生まれている、と感じた。そこで、(For HimでもFor Herでもない)“For Them”というノン・バイナリー向けのアパレルブランドへの投資を決めたんだ」
幼少のころから、研究者だった両親の仕事の都合でフィンランドとアメリカを行き来する生活をし、両方の文化を理解している。最近はパリにも拠点をもつ。自身や同じような境遇の友人のことをアメリカ人の妻は「クロスオーバー・スカンジナビアン」と呼ぶ。Web3.0の動きにもワクワクしている。
「僕はWeb2.0の世代だけど、それが進んで何が起こったかというと、Facebookなどの巨大プラットフォームへの権力の集中だ」。Web3.0では巨大企業の一握りのエグゼクティブがアルゴリズムを考えるのではなく、参加するすべての人が経営判断やガバナンスに参加できる。直近では、経営をDAO(分散型自律組織)に移行しようとしているクラウドファンディングのキックスターターにも追加出資した。
「社会正義について考えるか? そうだね。人は大抵、間違ったことや正義ではないことにエキサイトするからね」