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2022.05.17

スーツは死なず、パンデミック後の復活と変化

Kiselev Andrey Valerevich / Shutterstock.com

英国人たちは、パンデミックをともに過ごした部屋着や普段着に別れを告げ、再びドレスアップしているようだ。グーグル上のオーダーメイド関連の検索は600%増加し、2019年のレベルまで戻っている。

オーダーメイドとフォーマルウェアで知られる英企業モス・ブロス(Moss Bros)は、前年比1700万ポンド(約26億8400万円)増と、パンデミック前を上回る大幅な利益増を報告し、「スマートさが再び流行している」と述べている。

こうしたトレンドを、ポピュラーカルチャーもけん引しているようだ。ネットフリックスの新シリーズ『ブリジャートン家』の配信に伴い、スリーピーススーツ(ジャケット、パンツ、ベストの三揃い)の検索が急増し、第1話の配信後から500%も伸びている。

モス・ブロスのブライアン・ブリック(Brian Brick)CEOは、「他の衣服と同様に、スーツのデザインもファッションのトレンドを追いかけている」と説明する。「現在のトレンドでは、フォーマルウェアがカジュアル化し、カジュアルがスマート化している。今も昔も変わらないのは、男性たちが、オフィスに戻るにせよ、夜の街に繰り出すにせよ、自分をスマートに見せたいと願っていることだ」

グラミー賞やアカデミー賞などの大きなイベントでセレブたちが再びドレスアップするようになり、スーツも復活したが、以前よりも華やかで大胆になっている。

多くの有名人を顧客に持つ、セレブ向けスタイリストのフィル・ターリング(Phill Tarling)は、スーツをこよなく愛している。「オーダーメイドに関しては、フィット感を第一に考えることを強く推奨する。私は、自分のテーラーを短縮ダイヤルに登録している」

ターリングは、ファッショントレンドが常に移り変わるものであることに同意しつつも、バイヤーの間では、今後は長く着られる衣服が重要になるとの認識が広まっているとみている。

ターリングはイメージコンサルタントとして、ソニーミュージックや、英国映画テレビ芸術アカデミー(BAFTA)と仕事をしてきた。同氏は、消費者が自分に似合うものをもっと知ることが、気持ちに大きな影響を与えると提唱している。 

「ぴったりフィットしたスーツは、ナイフのように切れ味が鋭く、まず流行遅れになることはない。堂々とした装いをすることは、周りの人に良いインパクトを与え、自信と生産性を高めることが知られている」とターリングは言う。

モス・ブロスのブリックCEOも同様の見解を述べ、さらに、かつてのフォーマルウェアのスタイルが変化しつつあると指摘する。「最近では、男性のドレスコードが『再コード化』され、これまでになかった、フォーマルとカジュアルの隙間を埋めるスタイルとカラーが登場している」

つまり、スーツが廃れていないことは明白だ。スーツは、着る人の快適さとスタイルに合わせて、新たに生まれ変わっているのだ。より賢く、よりサステナブルに購入することが重視される昨今では、買い物は、一生ものの「投資」になりうる。たとえそれが、古着屋やリバイバルファッションの市場から買った服であったとしてもだ。

「体にフィットしたスーツは、すべての紳士がワードローブに備えておくべきものだ。それはファッションではない。常識だ。重要なのは、スーツにいくらお金をかけるかではなく、どれだけ自分の体型にフィットし、美しく見せてくれるかだ」とターリングは言う。

「スーツは決して廃れないが、今後も進化していく。スーツを着ることは、鎧を身につけるようなものであり、特別なイベントや会合に臨む多くの人が求める自信を与えてくれる」

翻訳=高橋朋子/ガリレオ

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