犯罪者の巣窟に? アメリカのモーテルで起きている異変と対策

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あるいはロサンゼルスでも、近隣に迷惑となる行為を許したモーテルに対しては罰金刑の対象となり、実際に10年間で150件の罰金の徴収があり、金額は合計で約3億円に上っている。

またロサンゼルスの郊外のチューラビスタでは、他のモーテルと比べて「50%増の911番通報」で営業停止処分とすることに決めた。

ミネアポリスの郊外にあるローズビル市でも、ひと月に10件以上の911番通報をした場合には、ホテルに対して1回の電話あたり250ドルの「911番の科料」を取るというラディカルな条例まで制定した。

こうなってくると、モーテルはホテルよりも割安かもしれないが、旅行者が快適に使えるものでないという印象を持たれそうだが、モーテルは実に不思議な施設で、一概にそのようには断定ができない。

著者の経験では、モーテルのほうが、ホテルよりも確実に静かに眠れる。なぜかというと、逃亡者や麻薬密売者は、警察沙汰になるのを逃れたいがために、驚くほど静かに暮らしている。人と目を合わせないし、電話をかけるときには車の中に入ってかけるほどの用心ぶり。静かな睡眠だけを願う、泊まるだけの旅行客にはこの環境は好都合だ。


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筆者は、付近に巨大な遊園地があるようなファミリーリゾートホテルのほうが、夜中まで子供たちがはしゃいだり、大きな映画の音が漏れ聞こえたりして、眠れないという事態を全米各地でよく経験した。

さらにモーテルの3倍の値段をとるような立派な高級ホテルであっても、学生の卒業パーティーや、軍人の同窓会などの宴会が階下で催されていると、宿泊フロアにも明け方まで酔っ払った人間の嬌声が廊下にあふれ、その騒ぎに徹夜で付き合わされることもある。

しかもアメリカのホテルのフロントは、驚くほど騒音に対して及び腰で、交渉してもたいてい無駄なのだ。そして、ホテルのポータルサイトは、この手の騒音については情報がなく、あまり役に立たない。誤解を恐れずに言うと、全米どこの都市に行っても、どんな宿泊施設に泊ろうとも、その夜を静かに眠れるかどうかは賭けに近くなっている。

ということで、モーテルはあいかわらず手軽に宿泊できる旅の宿として需要はあるのだが、このところ犯罪の温床となりつつある危うい事態は、やはり憂慮する出来事であることは確かだ。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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