中国は厳格な感染対策を継続しなければ、現在主流となっているオミクロン株による「感染の“津波”に直面する可能性がある」と警告する研究結果が医学誌ネイチャー メディシンに発表された。
中国当局は、論争の的となっている「ゼロコロナ」政策に基づいた措置をさらに強化。厳格なロックダウン(都市封鎖)によって社会・経済的な損失が拡大するなかでも、現在の方針を維持している。
中国では3歳以上の90%以上がすでにワクチン接種を完了し、およそ54%が追加接種を受けている。だが、発表された査読済みの論文によれば、中国が現在のような厳格な封鎖措置を放棄した場合、6カ月以内におよそ155万人が、感染によって死亡する可能性があるという。
オミクロン株の感染拡大を放置すれば、5~7月にかけて流行の大きな波が起こり、9月までに入院者数は約510万人、集中治療室(ICU)での治療が必要となる感染者は約270万人にのぼるとされている。ICUの需要がピークを迎える時期には、現在の受け入れ能力のおよそ16倍にあたる数が必要になるという。
また、感染による死者の大半(およそ4分の3)は、ワクチン接種を受けていない60歳以上の高齢者になるとみられている。これは主に、中国の高齢者の間では、未接種者が相当数にのぼっているためだ。
論文を発表した研究チームは、中国が先ごろ使用を承認した抗ウイルス薬や検査体制の拡充、接種・追加接種の奨励など、政府がウイルスとの共生を目指す政策に転換すれば取り入れる可能性があるいくつかの戦略をモデル化した。
仮に「ゼロコロナ」政策の下で実施されてきた規制を解除する場合でも、それだけでオミクロン株のリスクを完全に抑制し得る戦略はない。医療崩壊を防ぎ、毎年起きるインフルエンザの流行と同程度にまで、死者を減らすことができる方法もない。
研究チームは、今後の政策においては、高齢者のワクチン接種を推進し、抗ウイルス薬の使用を拡大することが、優先事項であるべきだと指摘している。また、長期的には、換気効率の向上や集中医療の能力強化、より効果の高いワクチンの開発などを目指す政策も重要だとしている。