「腸活」ブーム、DTC企業も触手 検査キットなどで強み発揮

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腸内の状態を整える「腸活」への関心が高まるなか、DTC(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)企業は、自宅で手軽に腸の状態をチェックできる検査キットでその商機をつかもうとしている。

米ワシントン州ベルビューに本社を置くバイオテクノロジー企業ヴァイオーム(Viome)は、腸内環境の検査キットを消費者に直接販売している。購入者は、送られてくる検査キットを使って自分の血液や便を採取し、ヴァイオーム側に返送。同社の科学者がこの検体を解析し、数週間後にレポートが送られてくる仕組みだ。価格は1回あたり149ドル(約1万9500円)からとなっている。

レポートでは本人の腸の健康状態や生物学的年齢、細胞機能、免疫力、エネルギー、ストレスレベルなどを判定するほか、検査結果に基づいて食事やプロバイオティックスに関する提案もしている。人工知能(AI)を活用したマイクロバイオーム(細菌叢)解析を手がける同社は最近、がんや慢性疾患の臨床研究を実施するため5400万ドル(約71億円)を調達している。

腸の健康への関心は2007年ごろから高まってきた。米国で同年、マイクロバイオームが人間の健康に果たす役割を調べる「ヒト・マイクロバイオーム・プロジェクト」が始まったのがきっかけだ。これまでの研究で、腸は消化だけでなく外見や気分などにも影響を及ぼすことがわかっており、腸の健康管理は全般的な健康の維持に欠かせないとの認識が広がってきている。

DTC業界はこのトレンドに乗り、腸活サプリなどウェルネス製品を売り出したが、多くの企業は画一的なアプローチには限界があることにすぐ気づいた。そもそも腸内フローラは人によって異なるからだ。そのためヴァイオームのように、消費者ひとりひとりにパーソナライズした製品やサービスに注力する企業が増えてきている。

腸の健康状態の検査キットは製品としてはまだ発展途上の段階かもしれないが、今後大きな成長が見込まれる分野だ。世界全体の市場規模は2021年の約1億1100万ドル(約146億円)から、2030年には約8億8600万ドル(約1160億円)に拡大すると予想されている。

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)も追い風になっている。コロナ禍を機に人々の健康に対する意識が高まり、腸活は予防医療の観点からいちだんと注目を集めるようになっているからだ。

マイクロバイオームのバランスが乱れると、慢性的な炎症が続き、ウイルスへの感染期間が長くなる可能性があるという研究もある。また、腸をきちんとケアすれば、感染予防、ひいては全般的な健康状態の改善につながるとみられている。

家庭用検査キットにはこのほか、医療機関を直接訪れず手軽に検査を受けられるというメリットもある。半面、臨床の場で行わない検査は正確さに欠けるという批判もつきまとってきた。

ロンドンで腸専門のクリニックを経営し、この分野の著書もあるメーガン・ロッシは、腸の健康の研究にとって「エキサイティングな時期」を迎えているとする一方、商業用の検査については「その結果に基づいて各人に応じた栄養学的な助言ができるかどうかは、現時点ではまだ検証されていないという点を認識しておく必要がある」と指摘している。

編集=江戸伸禎

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