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2022.05.12

「SPACブーム終焉」の今、投資家とスタートアップが歩むべき道

Getty Images

フェイスブックの共同創業者のエドゥアルド・サベリン(Eduardo Saverin)と、ベインキャピタルの元幹部のラジ・ガングリー(Raj Ganguly)が2015年に創業したBキャピタルは、市場のボラティリティが高まる中で、特別買収目的会社(SPAC)を設立する計画を中止した。

「我々は、自社でSPACを設立する計画を見送ることを決定した」と、Bキャピタルのマネージングパートナーであるガングリーは、先日のフォーブスアジアのインタビューで話した。

Bキャピタルは昨年2月に「B Capital Technology Opportunities Corp.」と呼ばれるSPACの設立に向け、3億ドルを調達する計画を米国証券取引委員会(SEC)に提出した。しかし、その後の長引くパンデミックやロシアのウクライナ侵攻により世界の株式市場が急落し、SPACに対する投資家の意欲はしぼんでいる。

注目されたSPAC銘柄の多くは暴落し、東南アジアの配車大手「グラブ」の株価も、上場価格を大幅に下回る価格で取引されている。

「現在の市場環境は、SPACにとって好ましいものとは思えない」とガングリーは述べた。

米法律事務所ホワイト&ケースが2月に開示したデータによると、昨年は世界で3000社以上がSPACとの合併で上場し、6000億ドル(約80兆円)以上を調達した。しかし、中国のGaw CapitalやHony Capital、米国のVictory Acquisitionなど、いくつかの企業がここ数週間でSPAC経由の上場計画を中止しており、今年はそのペースが落ちると見られている。

SPACが上場ターゲット確保するまでの期限は2年で、買収が成立しなければ、調達した資金を投資家に返却する必要がある。「この市場が抱える問題は、多くのSPACが2022年に期限切れを迎えるため、全員が案件を探していることだ」とガングリーは述べた。

Bキャピタルは現在、SPACや伝統的なIPOを問わず、投資先の企業の上場を急いでいないという。「世界最高のビジネスがあっても、IPOの窓口はかなり閉ざされた状況にある。この状況が元に戻るためには、少なくともあと数四半期が必要だと考える」とガングリーは述べた。

北米企業のアジア進出を支援


現在35億ドル以上の資産を運用するBキャピタルは、北京、香港、シンガポール、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスにオフィスを構えている。これまで世界145社以上を支援した同社の出資先には、インドのオンライン教育プラットフォームの「Byjus」やシンガポールの物流スタートアップの「NinjaVan」など、アジアで最も急速に成長しているユニコーンが含まれている。

「当社の出資先の多くの企業がSPACからオファーを受けているが、現状ではそれらの企業が上場を急ぐのではなく、まずは収益性を高めることが重要だと考えている」とガングリーは語った。

一方、北米でこれまで50社以上のスタートアップに投資したBキャピタルは、それらの企業がアジアで事業を拡大するための支援を続けていく予定だ。サンフランシスコを拠点とする会話型Eコマースプラットフォームの「Yalo」は昨年Bキャピタルの主導で5000万ドルを調達した後、インドに進出を開始した。

編集=上田裕資

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