毎朝キーウから届く、最後の「コーヒー写真」

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戦争や紛争の犠牲となる子供や動物の支援をミッションに掲げ、活動を続けているNPO法人「ワールド・チルドレンズ・ファンド・ジャパン(以下WCFジャパン)」のインターナショナル・コーディネーター、賀陽シンディの元には、毎朝ウクライナから一杯のコーヒーの写真が届く。送り主は、キーウ近郊ビシュネーブに住む23歳の青年、ローマン・ヒューミニックだ。

ロシア軍からの激しい攻撃を受ける中「今日が最後かもしれない」という思いを抱えながらウクライナで支援活動を続けているというローマンとシンディが出会ったのは、ハーバード大学の学生がローンチしたウェブサイト「Ukraine Take Shelter」上だったという。

今、キーウで何が起こっているのか。そして、支援活動を続けるウクライナ人が抱く、現在の思いとは──。シンディがローマンに聞いた。


──朝はいつも定番ともいえるコーヒーで目が覚めるのですが、ここ最近はローマンさんからメッセンジャーで送られてくるコーヒーの画像で一日が始まる毎日です。ローマンさんは、どのような思いで私に毎朝コーヒーの画像を送ってきているのでしょうか? また、今回このように戦争に突入することは多くのウクライナ国民にとって想定内のことだったのでしょうか?

正直いって、今僕たちが生きているこの時代に他国からこのような侵攻を受けることがあるとは思ってもいませんでした。何の罪もない子供たちや市民が野蛮な破壊行為により迫害を受けることなど、全くといって良いくらい想像していなかったし、ロシア軍からの攻撃のためにウクライナの多くの主要都市が瓦礫状態になっている今でも、ウクライナ国民の一人としてこのような現実を受け入れるのはとても難しいことなんです。

今はまだ朝のコーヒーを毎日楽しむことができますが、そうした安息の時間を持つことがいつまで許されるのか、今までは強いて考えることもなかった「明日の自分、さらに明日の存在」について複雑な思いを巡らせながら、メッセンジャーでコーヒーの画像を送っているんです。


毎朝送ってくるコーヒーの写真:ローマン・ヒューミニック提供

──現在ウクライナ国民は自分たちの命を掛けて戦っているわけですが、歴史的な観点から何が国民にそのような思いを掻き立てているのでしょうか?

「ロシアの母」と呼ばれるウクライナはもともと、現ウクライナのキーウを首都とした東欧の国家「キエフ大公国(882年~1240年)」に端を発していて、文明的にはロシア、ベラルーシと共通の流れを持っているんです。ただ国家の大半が肥沃な平原や高原地帯に覆われているということから、異民族からの侵入には極めて脆弱で、ウクライナ国民は歴史上数多くの侵略を受けて来たという経緯があるんです。

ですから、国の存続を掛けて自由と独立のためにずっと闘い続けてきたウクライナ国民にとって、自由を手にする権利は何よりも大切なことで、その権利が脅かされることがないよう、今私たちウクライナ国民は自分たちの命を掛けて総力を挙げてロシアによる侵略と戦っているんです。
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