トヨタが北米工場に導入するAI監視システム「Invisible AI」の実力

トヨタ自動車の北米事業体トヨタ・モーター・ノースアメリカ本部(米国テキサス州プラノ)(JHVEPhoto / Shutterstock.com)

トヨタ自動車の北米事業体トヨタ・モーター・ノースアメリカ(TMNA)は、「Invisible AI」のAI技術を導入し、工場における品質や安全、生産性の向上を図る。

トヨタは5月4日、北米にあるTMNAの14カ所のすべての生産拠点にInvisible AIのコンピュータビジョン・プラットフォームを導入すると発表した。オースティンに本拠を置くInvisible AIのテクノロジーは、AI(人工知能)が製造オペレーションの隅々までを監視し、あらゆる課題を分析するものという。

「我々は、工場内で生じている問題やボトルネックを可視化するツールを提供することで、より安全な職場環境の実現を支援する」とInvisible AIの共同創業者兼CEOであるEric Danzigerは述べている。

TMNAの工場に導入されるInvisible AIのシステムには、500台のエッジAIデバイスが使われている。このデバイスは、エヌビディア製チップセット「Jetson」や、1TBのストレージ、フロアの業務をトラッキングするための高解像度3Dカメラを搭載している。

「カメラとデバイスは、AIコンピュータビジョンモデルが、撮影した映像を常時処理しており、リアルタイムで情報や知見を提供することが可能だ。例えば、シフトレポートが見たければ、シフトの終了の直後に確認できる」とDanzigerは話す。

Danzigerによると、映像データはクラウドにアップロードせず、解析のために外部にエクスポートすることもないという。工場の従業員は、監視カメラに慣れており、Invisible AIのシステムを導入することで、従来よりも詳細に彼らの仕事とパフォーマンスを監視することができるという。

トヨタの製造部門を統括するバイスプレジデントのStephen Brennanによると、従業員には、プライバシー保護について十分な説明を行ったという。「プライバシー保護は最優先事項だ。トヨタの工場作業員は、生産レベルに関する映像以外のデータを匿名化するInvisible AIの技術の開発や導入、活用に積極的に取り組んでいる」と彼は述べた。

Invisible AIのシステムには、匿名化技術が組み込まれている。同社の共同創業者でCOOのPrateek Sachdevaは、「我々のAIシステムは、人体の関節に焦点を当てている。顔認識技術は搭載しておらず、人物を特定する情報は取得していない」と話す。

トヨタの工場で働く従業員は非組合員だが、組合を持つ他社の工場がInvisible AIのシステムを導入する場合、組合員のプライバシー保護について説得力のある説明が求められるとSachdevaは考えている。

「我々は、厳格なプライバシー保護が求められる米国や欧州において、組合を持つ工場への導入を積極的に進めている。我々のシステムは、労働者のプライバシーを侵害しない」とSachdevaは述べている。

トヨタは、まず年内にインディアナ州にある工場に500台のエッジAIデバイスを導入し、より広範な用途に導入することを検討しているという。

「我々は、Invisible AIの技術を、安全性向上や人間工学など、車両組み立て以外にも利用することを研究している。テクノロジーの柔軟性が、Invisible AIの大きな魅力だ」とBrennanは語った。

編集=上田裕資

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