ナイキが買収したRTFKTベンワ・パゴットが語るWeb3と日本への愛

私はポリネーターとして生きている。蜂が花粉を運び植物を受粉させるように、人を繋ぎ新たな価値を生み出すことを生業としている。このポリネーションの力を、来るべきブロックチェーンベースのWeb3世界にブリッジさせるためにどうしたら良いのか? そのヒントを『RTFKT(アーティファクト)』の共同創業者の1人、ベンワ・パゴット(Benoit Pagotto)が示してくれた。

約1年ぶりのベンワへのインタビューは、NFTやWeb3、メタバースなどのテクニカルな話よりも、わたしたちのマインドセットを大きくシフトさせるエネルギーに満ち溢れていた。

一年前のインタビュー以降、日本を代表する現代アーティスト村上隆とのコラボレーションNFT「CloneX」リリースや、ナイキによる買収など、大きなニュースが続いているベンワとの久々のインタビューの前夜は正直興奮して眠れなかった。夢にまで出てくるほどである。貴重な時間を有意義に使うべく、以下3つにフォーカスしつつも、直近のRTFKTの動きも含めて伺った。

・Web3時代を生き抜く企業のマインドセット
・日本人NFT アーティストの優位性
・快進撃を続けるRTFKTベンワ・パゴットのモットー

Web3時代を生き抜く企業のマインドセット


インタビュー当日ベンワ・パゴットはニューヨークにいた。通常はパリを拠点にしている彼だが、5月11日より世界的に有名なギャラリー「GAGOSIAN」開催の村上隆とのコラボレーション展示に向けてニューヨークに来ているという。

仕事続きと時差ぼけが取れずにいるところに時間を割いてくれたことに感謝しつつ、まず最初に聞きたかったのは、大成功のNFTプロジェクト「CloneX」やNIKEによるRTFKT買収により彼自身の生活がどのように変わったのか、である。無粋とは百も承知で「結構儲かったんだよね?」などと聞きつつ生活の変化を教えてもらおうと思ったのだが、彼の返事はとてもシンプルだった。

「成功を喜びつつも、生活に大きく変化はなく引き続き忙しくしている」、とのことだ。ただ、人々のRTFKTへの見方が変わったという。ナイキによる買収後は、それまでRTFKTが掲げるビジョンに対して真剣に聞く耳を持たなかった人々も真剣に向き合ってくれるようになったそうだ。

金銭的にも豊かになったのはCloneXの快進撃でも明白だが、その実際は多忙により恩恵を味わっている暇がない、とのことだ。「オールドワールドよ、さらば!」と銘打ちメタバースおよび新たなワールド構築をゴールに突き進むRTFKTの活動はまだまだ始まったばかりであることを感じさせる。

RTFKTはオーガナイズド・カオス・メソドロジー(Organized Chaos Methodology:組織化されたカオス方法論)に従い、分散型グループとして活動している。昨年取材した際には4名程度だったチームメンバーも、現在25名程に拡大しているという。

所属するARクリエイターASAGI (@asagi_tokyo)に先月東京で会ったことを伝えると、ASAGIのことは以前から注目していて彼のARがRTFKTの世界観には必要であり、チームメンバーとして迎えることができたこと、また、やっと先月プロジェクトマネージャーが仲間に加わってくれたとも喜んでいた。それまではベンワがプロジェクトマネージャーを兼任していたらしい。

NFT界に衝撃を与えつづけるCloneXは専任プロジェクトマネージャー抜きで実施していたことに驚いた。Web3時代に大切な事の一つに「オーナーシップ」を挙げている彼だが、自分自身が実践しているから言える事なのだろう。
次ページ > ベンワの考えるWeb3とは

文=西村真里子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事