それと同時に、NFTの購入に用いられるイーサの価格は昨年11月に4500ドルを記録したが、5月の第1週には約2800ドルに落ち込んでいる。ビットコインの価格も、同時期に6万5000ドル強を記録した後に、3万9000ドル付近に落ち込んだ(これらの価格は5月5日現在のもの)。
一方で、アプリ調査企業Apptopiaのデータで、世界最大級のNFTのマーケットプレイスのOpenSeaのアプリのダウンロード数は、1月のピーク時に1日あたり18万件を記録したが、現在は約90%マイナスの約2万件にまで急減している。
さらに、別のマーケットプレイスのVeve Collectiblesのアプリ内売上も、昨年11月から90%減少したとApptopiaは述べている。
これらのデータから見えてくるのは、NFTの市場が減速に直面しているという事実だ。Apptopiaのデータによると、世界の上位50の暗号通貨アプリのダウンロード数は、昨年11月から64%も減少したという(ただし、同期間の月間アクティブユーザーの減少率はわずか6.5%で、この数値は、これらのアプリが既存ユーザーをつなぎとめていることを示している)。
NFTのブームは、2021年3月にビープルという無名のアーティストの作品に約6935万ドル(約75億円)という値がついたことで一気に加速した。ジャック・ドーシーがオークションに出品した「世界初のツイート」のNFTは、同時期に290万ドルで落札されていた。
しかし、今年4月のオークションに再度出品されたドーシーのNFTの入札価格は、約1万4000ドルにとどまり、99%の値下がりとなったことが大きく報じられていた。
WSJは3日の記事で、米国の金利の上昇により、金融市場全体でリスク回避の動きが広がり、NFTが最も投機的な賭けの一つとなったことを指摘した。NFTの価値を裏付けるのは、その希少性だが、あまりにも多くの「アート」が出品された結果、供給過剰に陥ったことは否定できないだろう。
これらのデータは、NFTが永遠に絶望的であるとか、暗号通貨が失敗に終わったことを示すものではないが、この市場がある種の岐路に直面していると考えるのが妥当だろう。
メタバースの成長が続く中で、デジタルの所有権をやり取りするNFTは重要であり続けるはずだ。しかし、もしそうであるなら、私たちはこの幻滅の谷を通り抜け、本当の価値に基づいてこのスペースを再構築することが必要になりそうだ。