日本人がアイスクリームと出会ったのは江戸時代末期のこと。日米修好通商条約の調印を受けて、幕府が批准(国が行う最終確認・最終合意)交換のために派遣した使節団の一行が、日本人として初めてアイスクリームを食べたといわれています。
従者として同行した柳川当晴は、『渡航日記』にて「味は至って甘く、口中に入るるに忽ち溶けて、誠に美味なり。之をアイスクリンといふ」と、アイスクリームに出会った感動を記しました。また、勘定組頭の森田清行も、アイスクリームの形状やつくり方を『亜行日記』に詳しく残しています。そして、このとき使節団に随行していたうちの1人が、後に「アイスクリームの父」と呼ばれる町田房蔵でした。
町田房蔵は、明治時代になった1869年、横浜の馬車通りで日本人として初めて日本で「あいすくりん」販売を始めました。1人前の値段は、小さなガラスの器にひと盛りしたもので、現在の貨幣価値に換算すると8000円相当。当時の大工の日当ほどの値段であり、かなりの高級品でした。
それから時が経ち、現在では手軽に味わえるようになったアイスクリーム。今年はイタリア発の「ズコット」や「カッサータ」がトレンドのスイーツとして注目されているようです。ズコットはスポンジケーキのなかにクリーム、アイス、フルーツなどを詰めたドーム型のケーキで、カッサータはナッツやドライフルーツを混ぜ込んだリコッタチーズクリームを冷やし固めたアイスケーキです。
流行のアイスにしても定番のアイスにしても、江戸末期や明治初期に思いを馳せながら味わうと、いつもより贅沢な気分を楽しめるかもしれません。
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