──他に、今後の課題は?
3つの視点で見るとわかりやすいと思います。1つ目はファン、2つ目は競技団体や球団・クラブといったライツホルダー、3つ目は当社のようなサービス提供者です。
ファンの課題から言えば、ウォレットを作るといったNFT特有の難しさがありますよね。ウォレットレスなものも出てきていますが、汎用性が狭く、そもそもNFT化する意味があるのかとなってしまう。
ライツホルダー側から見ても、NFTにはリスクが伴います。「価値の流通」と言いますか、例えばあるゲームのアイテムやキャラクターが、他のゲームに使えたり、参加したりできるようになるかもしれない。
ユーザーにとっては興味深いですが、ライツホルダーからすると自分たちのコンテンツが手元から離れ、アンコントロールな世界に持ち出されることでもあるので、当然怖さはあると思います。
サービス提供側からしても、そういった制約の中で、理解するのが難しい技術をファンにどう届け、盛り上げていくかという課題がある。
──盛り上がりの点で言うと、「NBA Top Shot」では複数の動画がランダムにパッケージされたパックを購入するので、誰のものが入っているかがわからない。このガチャ的な要素が魅力の一つとされていますが、Jリーグの動画NFTトレカでは取り入れられていません。
国内法の論点で、いわゆる「ガチャ」に相当するようなものは賭博罪に該当する可能性があるとされています。法的な整理、整備とライツホルダーの納得、これらの条件が整った段階で踏み出していくべきところだと考えています。
(c) 2021 Dapper Labs, Inc. (c) 2021 NBA Properties, Inc. All Rights Reserved.
──最後に、いま描いている近未来について、聞かせてください。
これまでスポーツファンの観戦体験はいわゆる「フロー型」でしたが、ブロックチェーン技術によって、熱狂を映像として持ち帰る「ストック型」の体験にできるようになりました。それを実現するのが「PLAY THE PLAY」です。
子供の時に父親に連れられて観戦した試合での名場面を、10年後に親子で振り返ることができる。ボランティアの皆さんが活動をログに残すといったようなこともできるようになります。
様々な体験をアセットとして楽しめる。スポーツコンテンツの消費体験が変わって行くことでしょう。
私たちとしてはこれから数年かけてインフラを整備し、そこに載せるコンテンツやアプリケーションを開発していきたいと考えています。そしてそのもう少し先には、メタバースやVR、ARにより、空間を横断した形でデジタルコンテンツを楽しむ世界が来るはず。いまは2030年くらいを目指して、取り組んでいます。
(上段左より)博報堂DYメディアパートナーズ ミライの事業室の市川氏、桐明氏/(下段左より)博報堂DYスポーツマーケティングの石間氏、後藤氏