1000万人が使う日程調整ツール「Calendly」を生んだ黒人起業家

日程調整ツール「Calendly」の創業者のトペ・アウォトナ(Calendly提供)


営業マンの苦労から生まれたツール


Calendlyのアイデアは、営業マンとして、毎日何十通ものメールと格闘しつつ、ミーティングの設定に苦労している時に浮かんだという。「現代のスケジュール管理は破綻していると思った」と話す彼は、2013年にアトランタのコワーキングスペースで、会社を立ち上げた。創業資金のために個人年金を解約し、クレジットカードの与信枠を使い切った。「今から考えると最悪の事態もあり得た」と彼は言う。

「以前のビジネスでは、少し逃げ道を用意していたが、Calendlyでは全財産をつぎ込んで、とことんやる覚悟だった」

プログラミングは、ウクライナのRailsware社に外注し現地でミーティングも行った(アウォトナは現在、戦火のウクライナ在住の10人の開発者の移転を手助けし、経済的な支援も行っている)。その年の年末にプロダクトを完成させたアウォトナは、地元のアトランタ・ベンチャーズから55万ドルを調達し、企業顧客への売り込みを開始した。

Calendlyは、個人ユーザーは無料で利用できるが、企業は通常1ユーザーあたり月額25ドルを支払う。社員が上司に製品を勧めれば、それがどんどん膨らんでいくことになる。

企業顧客は、カスタマイズされたランディングページを設定してグループを作り、セールスフォースや、Zoomなどの他のツールに接続することができる。Calendlyを導入した大手企業は、収益を大幅に伸ばせるとアウォトナは述べている。

例えば、ナスダックに上場する自動車通販サイトの「CarGurus」は、昨年5月にCalendlyを導入して以来、約2000件の商談を設定したという。同社のデジタル主任のマイケル・ライリーは「Calendlyのおかげで、業務時間を500時間節約できた」と話した。

ツイッターでの「論争」で注目


自分のスケジュールの空き時間を相手に知らせ、日程の調整を効率化するCalendlyのツールは、特に企業のリクルーターや営業マンに好評だが、同社は急激に支持を拡大したことで思わぬ反発を浴びることになった。シリコンバレーのスロー・ベンチャーズのサム・レシンは今年1月、Calendlyで空き時間を知らせてミーティングを設定するのが、傲慢さの現れで、「相手に対して失礼だ」という主旨のツイートを行い、大きな反響を巻き起こした。

これに対し、フェイスブックの共同創業者のダスティン・モスコヴィッツは、「何が気に入らないんだ?」と返信した(彼が経営するソフトウェア企業のAsanaもCalendlyを利用している)。アンドリーセン・ホロウィッツの創業者のマーク・アンドリーセンもこの論争に参加したが、彼は「私のCalendlyのリンクを無視する奴は、シリコンバレーのVCに出入り禁止にしてやる」と、皮肉をこめてツイートした。

アウォトナによると、この騒動のおかげで何万人もの新規ユーザーが新たに登録したという。「マーケティングチームは、いかにして人々にCalendlyを知ってもらうかについて考えてきたが、最も簡単な方法が、ツイートをすることだとは知らなかった」と彼は話した。

昨年夏、従業員424人の会社を完全にリモート化したアウォトナは、Calendlyの機能をさらに拡大し、海外進出も視野に入れている。週に25時間を会議に費やすという彼は「スケジュール管理を効率化し、準備やフォローアップを簡素化し、ビジネスを成功に導いていく。それが私たちのビジョンだ」と語った。

翻訳・編集=上田裕資

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