公共交通機関の「マスクなし」認めた米国、保安当局で感染者が急増

Pierre Crom/Getty Images

米国では4月下旬、連邦地方裁判所が示した判断を受け、公共交通機関でのマスク着用義務が解除された。それからおよそ2週間で、米運輸保安局(TSA)の職員の間で新型コロナウイルスの感染者がおよそ50%増加しているという。同局の広報担当者が明らかにした。

米司法省は、連邦地裁のこの判断に異議を唱える米疾病対策センター(CDC)の要請に基づき、判決に対して控訴している。米国内の1日あたりの新規感染者数は、1カ月ほど前にはほぼ横ばいの状態が続いていたものの、一部の専門家の間で予想されていたとおり、マスクの着用義務が解除されたことに伴い、ほぼすべての州で再び増加し始めている。

TSAは現在のところ、勤務中の職員も含め、空港内でのマスク着用を義務付けていない。ただし、市中感染の危険性が高いと考えられる地域の空港では(感染者ではなく、入院者で判断)、引き続きマスクの着用を求めている。

また、TSAの職員の中には、ごくわずかな割合ながらワクチン未接種の職員がおり(昨年11月の調査では5%)、同局は市中感染レベルが中程度かそれ以上の地区にある空港に勤務するこれらの職員に対し、感染の有無を調べる検査を義務付けている。そのほかTSAは、感染者との接触確認を継続しており、勤務中にウイルスに暴露したとみられる職員には、検査を義務付けている。

米国では検査を受ける人が大幅に減少しており、当局が1日あたりの感染者数を正確に把握することは難しくなっている。ワシントン大学は、実際の感染者数は、毎日報告される数の5倍以上にのぼる可能性が高いとしている。

多くは「義務」解除に違和感


一方、米国人の多くはいまも、公共交通機関でのマスク着用義務の解除に違和感を持っている。米調査会社ハリス・ポールが義務の解除が決定した直後の週末に行った調査では41%が、機内での快適さが「少なくともある程度は低下した」と回答。「少なくともある程度、より快適になった」と答えた人は27%だった。

マスクの着用義務が解除されたことが、今後の空の旅行に与える影響については、今のところ明らかではない。ハリス・ポールの調査では、飛行機を利用した旅行への意欲に「プラスの影響を与える」と回答した人は31%、反対に「マイナスの影響を与える」とした人は32%となっている。

また、「次に飛行機に利用するときもマスクを着用する」可能性があると答えた人は、「空港内」が67%、「機内で」が66%となっており、いずれも半数を超えている。

米疾病対策センター(CDC)は、感染と重症化から身を守るための最も安全な方法は、「推奨される追加(ブースター)接種についてなど、ワクチンに関する最新の情報を得ておくことだ」としている。

CDCのデータによると、12歳以上の米国人のうち、接種を完了した人は4人に3人(74.6%)。だが、ブースター接種を受けることが可能な人のうち、実際に受けた人は半数以下(約9100万人)だという。

編集=木内涼子

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