一般社団法人ペットフード協会の調べによると、新たに飼われたネコの数は、コロナ禍前の2019年は39万4000頭だったのが、2021年には48万9000頭と大幅に増えている。リモートワークなどが増え自宅にいる時間が多くなったため、在宅時の癒やしをネコに求める人が増加しているからかもしれない。
「近年、ネコ人気が高まり、ネコに関する商品は増えてきています。とはいえ、実はネコにとって『本当に使い勝手の良い商品』はごくわずかです。残念ながら、『インスタ映え』を狙ったような商品も多く、見た目は良くてもネコにストレスを与えるようなものが増えているのが実情です」
こう語るのは、猫用品のブランド「nekozuki」を展開する「クロス・クローバー・ジャパン」(岩手県盛岡市)の太野由佳子社長だ。ネコ用の爪切り補助具「もふもふマスク」や、傷口を舐めて傷が悪化するのを防ぐ「エリザベスカラー」などのヒット商品を生み出している。
太野由佳子社長
ヒットを支えた3つの「PRの柱」
Nekozukiブランドの主な販路は自社のECサイトだ。とはいえ、ネット広告は一切出さない。その代わり、自社の商品を知ってもらうためのPR手段として、3つの「PRの柱」を重視している。
まず1つが口コミ。動物病院で獣医たちが愛猫家に勧めてくれたことが、同社の飛躍のきっかけとなった。そして勧められた商品を気に入った愛猫家が、またそれを愛猫家に伝える、言わば「口コミの輪づくり」を積み重ねてきた。
同社の商品が獣医や愛猫家の心を射止めたのには、イヌなど他のペットとの兼用ではなく、「ネコだけのためのモノづくり」の徹底があるという。
例えば「もふもふマスク」は、爪を切るときにネコが暴れてしまうというという問題を、「目隠しをするとおとなしくなる」という習性を活用することで解決した商品だ。
「もふもふマスク」を被せれば、ネコが嫌がることなくおとなしいまま爪を切ることができる
コロナ禍で気軽な外出がままならなくなり、動物病院でネコの爪を切ってもらっていた飼い主たちが、自宅で爪切りに挑戦するようになったこともヒットの要因だ。それまで獣医たちがこの商品を使用していたことでも評判が広がり、2万枚を超えるヒットとなった。