ふたつの物語から学ぶチームづくりと強いリーダー

CEOがすすめる一冊「キングダム」

各界のCEOが読むべき一冊をすすめるForbes JAPAN本誌の連載、「CEO’S BOOKSHELF」。今回は、ブロードマインド代表取締役社長の伊藤清が「キングダム」を紹介する。


「ビジネス系マンガ」と呼ばれるジャンルをご存じでしょうか。ビジネスパーソンを主人公に描いた「島耕作」シリーズなどがその代表と言えますが、実は、ビジネスとはかけ離れたストーリーからも、事業や組織づくりのヒントを得ることができます。

なかでも経営者にお薦めしたいのが、「キングダム」と「ONE PIECE」です。この大人気作品から、私は実際に、社員を育てる「チームマネジメント論」を学びとりました。

まず、「ONE PIECE」の主人公であるモンキー・ルフィはやんちゃそうに見えますが、船長として圧倒的な戦闘力をもつ男です。また、自分の弱さを理解して、仲間を信じ、任せられるところもリーダーとして慕われる魅力のひとつ。仲間で言いたいことを言い合えるチームをつくり、敵と相対してきました。

当社は、さまざまな金融商品を通して、個人のお客様のライフプランの実現と、法人のお客様への財務体質改善や事業承継などのコンサルティングを主な事業としています。社員には幅広い専門的知識が求められ、一人前になるまでの期間が長い業界とされています。

そこで、当社では、社員が自らの得手不得手を知ったうえで、得意分野のスペシャリストとなり、互いに補い合うチーム制を確立しました。言いたいことを言い合いながら切磋琢磨する「ONE PIECE」流のチームづくりで、お客様の期待を超えるサービスを提供できるまでに成長したのです。

しかし、組織が大きくなってくると、それだけではうまくいかなくなります。そのとき、私が新たに加えたのが「キングダム」流のリーダー論です。キングダムは、「天下の大将軍になる」という大きな野望をもち、力強く人を引っ張りながら、ミスをも乗り越え、成長していく主人公「信」を中心に描かれた大作です。

その物語のなかで最も印象に残っているシーンは、信が憧れた最強の大将軍「王騎」が信を自分の愛馬に乗せ、大将軍しか見ることのできない景色を見せる場面。信の目に映ったのは、王騎の愛馬の周りを守るように囲みながら走り続ける多くの兵だけでなく、敵の群れや顔でした。そのなかを、王騎は重傷を負った体で、部下が退却できる道をこじ開けたのです。

常に最前線で戦いながら、近い距離で仲間を鼓舞し続ける王騎と信。企業がさらなる成長を実現するためには、このようなリーダーもまた不可欠です。

読みなれたマンガも自分がおかれたステージによって印象が変わり、新たな発見を与えてくれます。身近なマンガや気になっている作品があれば、ぜひ読み直してみてください。

title/キングダム
author/原 泰久
data/集英社638円 226ページ(第63巻)


いとう・きよし◎1998年位日本電気に入社。その後、ソニー生命保険で多くの実績を残し、2002年1月にブロードマインドを設立。複数社の保険を扱う独立系代理店として、21年3月に東証マザーズへ上場を果たす。保険業界では珍しく給与制を採用し社員を育てる方針をとる。

はら・やすひさ◎1975年生まれ。佐賀県出身。九州芸術工業大学(現・九州大学)在学中に漫画家を志す。同大学院に進み、2000年に修了後、約3年間エンジニアとしてサラリーマン時代を経て漫画家に。06年に週刊ヤングジャンプで『キングダム』の連載が始まる。22年2月時点で64巻まで刊行。

構成=内田まさみ

この記事は 「Forbes JAPAN No.092 2022年月4号(2022/2/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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