そのうちのトップとされるのがLGのEV用バッテリー部門の「LGエナジーソリューション」で、同社は1月のIPOで107億ドル(約1.4兆円)を調達した。LGエナジーの市場シェアは20%で、世界2位とされている。世界1位の中国のCATLのシェアは33%だ。
5位と6位は、SK傘下の「SKオン」とサムスンの「サムスンSDI」で、市場シェアはそれぞれ6%と5%とされた。SKオンは後発でこの市場に参入したが、フォードやフォルクスワーゲンなどを顧客としている。
これらの3社の拡大を支援するのが「Kバッテリー」と呼ばれる韓国政府の戦略だ。文在寅大統領は昨年7月、2030年までに韓国を世界のEVバッテリー市場のリーダーにすると宣言した。
この戦略に参加するLG、サムスン、SKの3社は合計350億ドルを研究開発に投資し、その見返りとして最大50%の減税などの優遇措置を受けられる。LGエナジーは210億ドルを投資すると述べている。
EUは、2035年までに電気自動車以外の新車の販売を禁止する見通しで、バイデン大統領も、米政府に同じルールを導入させようとしている。ガートナーの1月のレポートによると、今年の世界のEVの出荷台数予測は600万台で、2030年には3600万台が出荷される見通しという。
LGエナジーとサムスンSDI、SKオンの3社は、リチウムイオン電池に代わる次世代バッテリーの開発に向けて競い合っている。UBSのアナリストは昨年、2025年までに世界のEVの需要がリチウムの供給量を上回る可能性があると警告した。さらに、ロシアのウクライナへの侵攻によってサプライチェーンの問題は悪化している。
そんな中、サムスンSDI は3月に韓国初の固体電池のパイロット生産ラインの建設を開始し、2027年までの商用化を目指している。一方で、SKオンは硫化物系のバッテリーの研究を開始した。
投資家はEV用バッテリーの未来に前向きな姿勢を崩していない。EV用バッテリーの電解質を製造するチョンボ(Chunbo)の株価はこの1年で急上昇し、創業者のLee Sang-ryulは今年のフォーブスの「韓国の富豪ランキング」に保有資産14億ドルで初登場した。