ビジネス

2022.05.05

前澤ファンドが出資。スマホでピルを処方

坂梨亜里咲

人生設計を入念に描いても、思い通りにいかないことはある。そのひとつが女性の妊娠・出産だ。オンラインピル診療サービスを手がけるmederiの坂梨亜里咲もそうだった。

20歳のとき、「25歳までに一人前の社会人になり、27歳までに結婚し、30歳までに出産する」と決めた。20代半ばでスタートアップの代表に就任し、27歳で婚約。そこまでは計画通りだった。

しかし、婚約中に婦人科系の検査で「妊娠は難しい」と告げられる。結婚後、働きながら不妊治療を開始。顕微授精に年間300万〜500万円を費やしたが結果は出ない。精神的・肉体的に追い込まれるなか、「同じ思いをする人を減らしたい」との願いから2019年にmederiを創業した。

当初はサプリメントや膣内フローラチェックキットの開発・販売を手がけていたが、「妊活の前段階にある若い層には思うように届かなかった」。

そこでZOZO創業者の前澤友作が設立したファンド「10人の起業家に100億円」への応募を機に方針転換。出資を受け、22年1月に低用量ピルの処方を希望する女性と産婦人科医をつなぐプラットフォーム「mederi Pill」をリリースした。

LINEで診療予約し、医師のオンライン診療を経て自宅にピルが届く。予約から決済まですべてスマホ上で完結できる簡便さが売りだ。ピルというと避妊のイメージが強いが、「生理前のイライラや肌荒れなどのPMS(月経前症候群)改善が期待できる」と坂梨は言う。

「私自身、生理不順を治すために10代からピルを服用していました。PMSは現代女性が最も感じやすい不調のひとつ。21年6月のプレリリース時には約1万7000人の応募があり、このサービスは女性の共感を呼ぶと実感しています。3年後には10万人以上が利用するサービスに育てたい」

坂梨は医師から早発閉経の可能性が高いと指摘されている。

「すでに更年期症状が始まっているので、今後は更年期のサポート事業も展開したい。自分だからできるサービスがあると信じています」


さかなし・ありさ◎明治大学卒業。ECコンサルティング会社にてマーケティングおよびオペレーションを担当したのち、スタートアップ企業で女性向けウェブメディアのディレクターやCOO、代表取締役を経験。自身の4年にわたる不妊治療の経験から、2019年にmederiを創業。

文=瀬戸久美子 写真=帆足宗洋(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN No.092 2022年月4号(2022/2/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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