ビジネス

2022.05.04 12:30

マネジメントの神髄は、人への「感度」にある──植野大輔と探る「CxO」のビジョン


機動性がある意思決定のために


植野:これからのCxO像をどう考えていますか?

堀田:これだけ揺らいでいる世界では、2年前といまでDXの重要度がまるで変わりました。機動的にいろんな組織とかかわらなくてはいけないなかでは、合議制よりも、意思決定の速さが重視されます。経営リソースも、意思決定権限も、今後は集中化していく流れになるでしょう。

植野:少数精鋭の経営チームを構築せよと。かつてジェフ・ベゾスが「会議はピザ2枚で足りる人数に抑えろ」と言いました。これは、会議は5〜6人、多くても8人以内でという意味ですが、これからは「ピザ1枚」という時代になるのかもしれません。

堀田:そこで必要なのがパーパスです。数人で「こっちだ!」と決めるとき、納得感が一瞬で醸成されなきゃいけません。「本当にこれは合理的か?」みたいな議論を毎回していると、すべてが後手に回ってしまいます。

未来に没入して思い描く「トランスフォーメーション思考」が必要だと僕が主張するのはそういうことです。「未来はこうなるよね。ここに行けそうならOKじゃないか」とすぐ決められますから。

植野:フューチャリストの出番ですね。

堀田:さらに重要なのはストラテジー、CSOの役割です。CFOやCHROもそうですが、ガラッと資源配置を変えていくことに対して社員の納得感をもたらせるCxOが必要です。それができない組織にはイノベーションが起きません。

僕が最も興味があるのは、イノベーションや創発が起きる状態の探求です。そのために必要なものは、人の才能かもしれないし、テクノロジーかもしれない。さまざまな要素があるので、それらを全部解明していきたいと思っています。


植野大輔・堀田創共著『トランスフォーメーション思考』(翔泳社)は、個人が組織の変革を自分ごととしてとらえられるようになるメソッドを8ステップで解説。「シリコンバレーと比べたときに日本の閉塞感はどこから来るのか」(植野)。「未来志向が必要というメッセージを打ち出した」(堀田)。

<「CxO」のビジョン、三カ条(堀田創)>
一、人への感度を磨くこと。
二、合議を重ねるよりも、相手の視座を上げる。
三、戦略思考で、未来の姿を組織全体に共有する。


ほった・はじめ◎1982年生まれ。慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了。在学中の2005年よりシリウステクノロジーズに参画、チーフアーキテクトとして位置連動型広告配信システムの研究開発を主導。06年にネイキッドテクノロジーを共同創業、11年にミクシィへ売却。その後、AI-OCR・音声認識・自然言語処理など、人工知能によるビジネスソリューションを提供する「シナモンAI」を共同創業。

うえの・だいすけ◎DXJAPAN代表。早稲田大学政治経済学部卒業、MBA取得、商学研究科博士後期課程単位満了退学。三菱商事入社、ローソンへ約4年間出向、PontaカードなどのDXを推進。ボストンコンサルティンググループを経て、ファミリーマートへ。ファミペイの垂直立ち上げなどDXを統括・指揮。モルゲンロット執行役員 CSO。

文=神吉弘邦 写真=有高唯之

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