ビジネス

2022.05.04

マネジメントの神髄は、人への「感度」にある──植野大輔と探る「CxO」のビジョン

植野大輔(左)と堀田創(右)

CxO(シーエックスオー)は、トップであるCEOを組織の要として支えるスペシャリストたち。CCO、CFO、CIO、CLO、CMO、COO、CSO、CTO……こうした役職に必要な能力と条件、その立場から得られる知見とは?ローソンとファミリーマートのデジタル戦略を担った「コンビニの改革者」の植野大輔が、注目の人物にインタビューするシリーズ(隔月掲載予定)。


植野大輔(以下、植野):AIが専門である堀田さんは、フューチャリストの役職から企業の戦略を未来志向で担うイメージですが、いまはHR(ヒューマンリソース)の領域も管掌しています。現在に至るまで、まずは生い立ちから伺えますか。

堀田創(以下、堀田):NTTの研究者だった父の仕事の都合で4歳から5歳はボストンに住んでいたので、国際的なアレルギーが少ないタイプに育ちました。中学受験が終わったとき、父がパソコンを買ってくれたんです。プログラミングが面白くてはまり、中3のときにはAIっぽい話が好きになっていました。

植野:AIっぽいとは?

堀田:遺伝的アルゴリズムで人工生命のようなものをつくったり、英語の構文解析ができるプログラムをつくったりです。コンピュータの仕組みがわかる面白さを感じて大学受験は情報系一択でしたが、第1志望の東大に落ちてしまったんです。模試ではずっとA判定だったのにショックで。

植野:浪人しようとは思わなかった。

堀田:博士を少しでも早く取って見返すぞと。修士は1年半、博士は2年で取りました。

植野:すごい。猛勉強したんですね。

堀田:そういう感じでもなく(笑)、学生生活を満喫しましたね。サークルで出店した三田祭で声で性格分析するプログラムをつくって大当たりし、150万円は稼ぎました。バイトでは個人の塾で講師をやり、こうやって集客できるとか、人が辞めていくとか、初めて経営というものに触れました。成績表を出すExcelのマクロをつくったら喜ばれて、プロダクトっていいなという体験をしました。

植野:塾講師でビジネスと出合い、学園祭でスタートアップでいうPoC(※1)みたいなものを成功させたことで起業を考えたのですか。

(※1)PoC(プルーフ・オブ・コンセプト) 概念実証。新しい理論やアイデアを開発へ移す前に、実現可能性や効果を検証する工程を指す。ピーオーシー、ポックとも読む。

堀田:研究者になるつもりでしたが、学生時代に立ち上げたネイキッドテクノロジーで資金調達したんですね。ガラケーのコンテンツがスマホみたいに動くソリューションをつくったら1億円の出資が集まり、起業家としていけるかもしれないと思って。いったん博士号取得に専念するために離れ、再ジョイン後、ミクシィに会社をバイアウトすることになりました。ミクシィには1年在籍しました。

植野:その頃はまだ、SNSのミクシィですね。そのまま残る気はなかったんですか?

堀田:ちょうどDAU(※2)が折り返しになった難しい時期でした。B to Bの起業を2回体験したので、B to Cの新規事業をミクシィでやりたかったんですが、そんなことを言える場合ではなくなりました。

(※2)DAU(デイリー・アクティブ・ユーザー) ウェブサービスやアプリにおける、一日あたりのアクティブユーザー数。週間アクティブユーザー数はWAU、月間アクティブユーザー数はMAU、重複をカウントしないユニークユーザー数はUU。
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文=神吉弘邦 写真=有高唯之

この記事は 「Forbes JAPAN No.092 2022年月4号(2022/2/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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