ビジネス

2022.05.03

サンクゼール和の食材×現地食文化で米国市場の展開加速

SMALL GIANTS REPORT 久世良太 サンクゼール代表取締役社長

長野県飯綱町を本拠地とする食のSPA(製造小売業)企業、サンクゼールが海外展開を加速させている。2017年から進出している米国では、コストコなどの小売店を通じた店舗販売に加え、新たにEC事業を手がける現地企業と業務提携。自社商品の販売をさらに拡大する構えだ。

サンクゼールは、味噌や醤油といった全国の食材を扱う「久世福商店」をショッピングモールなどで運営している。バイヤーが生産者のもとを歩き回り、地域にある「本当のうまい食材」を発掘して加工食品にしている点が評価され、「Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARD 2020」ではグローカル賞を受賞。「久世福商店」の店舗数は現在、全国132店にまで拡大しており、「22年3月期は、オープンから18カ月以上経過している店舗の合計の売り上げが前期比で23%成長しました。会社の売上高も140億円を超えています」と代表取締役社長の久世良太は語る。

米国には、オレゴン州の食品工場を買収し、子会社化するかたちで進出。当初は現地の特産である果物を使用したジャムなどを生産し日本向けに輸出するビジネスが主体だったが、現在は米国市場向けの商品展開に舵を切り、「Kuze Fuku&Sons」のブランドで販売している。日本の食文化をそのままもち込むのではなく、「ゆず味噌ドレッシング」など、現地にあわせた商品を開発することで、アジア系の小売店だけでなく、コストコなどの大手の販路を開拓。「進出して3年で米国事業は黒字化しました」と久世は胸を張る。

22年1月には、新たに米BOKKSUとの業務提携を発表した。同社は米国の富裕層を中心に、日本の菓子をサブスクリプションモデルで提供しているスタートアップで、新たに開始したECサイトでサンクゼールの商品を扱う。すでに「あんバター」「なめ茸」など一部商品の販売が開始しており、今後3年間で500アイテムに広げていく方針だ。久世は、「まずは海外売上比率を10%、20%と増やしていく。15年後には国内と同等の規模に拡大したい」と意欲を示している。


くぜ・りょうた◎1977年生まれ。2002年、電気通信大学大学院修了後、セイコーエプソン入社。05年、サンクゼール入社。経営サポート本部長などを経て17年より現職。「Forbes JAPAN SMALL GIANTSAWARD 2020」関東甲信越大会グローカル賞。

文=眞鍋 武 写真=大星直輝

この記事は 「Forbes JAPAN No.094 2022年月6号(2022/4/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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