東京が「トップ10圏外」の指標もある?
しかし、マーサーの「世界生計費調査・都市ランキング」は、アメリカのニューヨークに本社を置く同社が「海外赴任者にとって物価がどれほど高いのか」を調査したランキングである。現地通貨の価値が米ドルに対して上昇した国では各都市が順位を上げる傾向にあり、物価が上昇しても米ドルに対して通貨安に推移した現地通貨をもつ都市はランキングが下がることも多い。あくまで、海外赴任者にとっての指数であり、一般的な物価指数を測るものではないのだ。
そこで、もう1つのランキングを見てみたい。英誌エコノミストの調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が発表する「世界の生活費2021」だ。
世界173都市で200以上の商品、サービスの価格を調べ、ニューヨークを基準に生活費を比較したランキングだ。
このランキングによると1位はテルアビブ、イスラエルの通貨シェケルの対ドル相場が高騰していることも影響しているが、特に食料品や交通費の値上がりが目立つという。以下、2位はパリとシンガポール、4位チューリッヒ、5位香港、6位ニューヨーク、7位ジュネーブ、8位コペンハーゲン、9位ロサンゼルス、10位大阪となっている。
驚くべきことにこのランキングでは、大阪が10位にランクインしており、東京はトップ10圏外なのだ。欧米とアジア先進国が上位を占めている状況はマーサーのランキングとも一致し、シンガポール、チューリッヒ、香港などどちらのランキングでもトップ10にランクインしている国も少なくない。EIUによると、調査対象の品目は各地の通貨ベースで昨年より平均3.5%値上がり(2020年は前年比1.9%高)、過去5年間で最も高いインフレ率となっているという。
前述した通り、東京の物価も前年同月比で上昇を続けている。この傾向は今後しばらく続くと思われるが、円安が進んでいるためマーサーのランキングでは順位を落とすことも考えられる。