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2022.05.06

ショッピングモール、生き残りには「デジタル化」が不可欠

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電子商取引(EC)で成功するには消費者のデータを集めることが必須になっている。たんに利益や売り上げを伸ばすためだけでなく、ユーザーひとりひとりに合った体験を提供するためにも、顧客に関するデータは欠かせない。キャップジェミニ・リサーチ・インスティテュートの最近のリポートによると、世界10カ国の消費者計10万人あまりを対象とした調査で、自分が購入した商品の消費や使用についてデータを共有してもかまわないと答えた人は全体の45%にのぼっている。またZ世代の68%、ミレニアル世代の58%は、より良い購入体験のために商品をブランドから直接購入したいと考えていることもわかった。消費者への直接販売(ダイレクト・ツー・コンシューマー=D2C)の成功は、各ブランドが消費者データを活用して買い物体験を向上できるかに大きくかかっていると言えるだろう。

データが将来の鍵を握るのはECだけではない。実店舗の行く末もまたデータにかかっている。従来、テナントや大家が手にしていたデータはせいぜい来客数くらいだったが、今では各ショッピングモールが独自にアプリをつくったり、Wi-Fiを提供したりするようになったことで、実店舗側もデータの活用で非常に大きな機会が広がっている。

たとえば、ショッピングモールの運営で世界的大手のウニベイル・ロダムコ・ウェストフィールドは、モール来訪者5億5000万人のデータを活用してテナント側にターゲット広告を販売し、新たな収入源にしている。ECでの顧客体験は非常に洗練され、パーソナライズされたものになっており、実店舗での体験はそれに大きく後れをとっている。これは逆に言えば、実店舗側にはEC側を模倣できる余地が大きいということでもある。

位置情報プラットフォーム、プレイサー・エーアイ(Placer.ai)の最新リポートによると、米国のショッピングモールの客足はまだ新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)前の水準に戻っていない。3月のモール来客数は3年前に比べると屋内型で9.5%減、屋外型のライフスタイルセンターで9.7%減、アウトレットセンターでは15.4%減となっている。不動産サービス大手ジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)によると、米国内の2021年第4四半期(10〜12月)のショッピングモール空室率は8.3%で、通年の新規稼働面積は490万平方フィート(約46万平方メートル)減った。こうした数字からも、商業不動産業界のモール運営方法には変化が求められていることがうかがえる。

ショッピングモール向けにデータを提供しているクラウドベースのプラットフォーム、プレイスワイズ(Placewise)のピーター・トンスタッド最高経営責任者(CEO)は「ショッピングモールはテナントのためにEC経済の一部になる必要がある。そうしなければ、消費者の支出が引き続き実店舗からオンラインに移っていくのにともなって、モールの重要性は今後さらに低下していくだろう」と警鐘を鳴らす。
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編集=江戸伸禎

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