自動車などの排気ガスに含まれる大気汚染物質への暴露と、若年成人層のほうが新型コロナウイルスの陽性反応が出やすいことのあいだに関連性があることが、スウェーデンで行われた研究で明らかになった。研究対象となったのは、2020年5月から2021年3月までのあいだにPCR検査で陽性反応が出た425人だ。
この研究では、窒素酸化物、黒色炭素、粒子径が10マイクロメートル以下の粒子状物質(PM10)、粒子径が2.5マイクロメートル以下の粒子状物質(PM2.5)という、4種の汚染物質を取り上げた。そして、参加者の居住地をもとに、これら4種の汚染物質にさらされたと推定した。データ源は、1994年から1996年のあいだにストックホルムで生まれ、長期にわたってモニタリングされた4000人以上のコホートだ。
その結果、PCR検査を受ける直前の2日間にPM10およびPM2.5にさらされたことと、検査で陽性反応が出るリスクの上昇には関連性があることがわかった。
検査前日に黒色炭素にさらされた人は、陽性者になるリスクも上昇した。しかし、窒素酸化物と新型コロナウイルスへの感染リスクのあいだに関連性があることは確認されなかった。
研究チームは、こうした結果と、性別や喫煙、肥満、喘息といった他の要因との関連は確認できなかったとし、大気汚染への暴露と新型コロナウイルスへの感染とのあいだの関連性は「一般的に言えるもの」であることを示唆した。
ストックホルムにあるカロリンスカ研究所の小児医療科学者で、研究論文著者の1人であるエリク・メレン(Erik Melén)は、この程度のリスク上昇なら軽微だと思われるかもしれないが、「誰もが多少なりとも大気汚染にさらされていることを考えれば、公衆衛生に重大な意義を持つ可能性がある」と述べた。
大気汚染と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との関連性を説明できる説が、他に存在するのかどうかはわからない。このたびの研究結果は、PCR検査を受けようという参加者の自発性、ならびに、多くの参加者が無症状か軽症で済んでいたという事実に影響を受けた可能性があると、研究チームは明かしている。
また、今回の研究デザインでは、屋外での滞在時間や、交通機関を利用した時間の長さのような、他の要因が結果に影響を及ぼした可能性も排除できない。
大気汚染は、心疾患や脳卒中、がん、精神疾患など、世界の主要な疾病や死因のリスク要因として知られている。世界保健機関(WHO)の推定では、大気汚染によって年間700万人ほどが死亡しているほか、多数の人々の生活の質が低下している。こうした健康への悪影響は、喫煙や不健全な食生活といった他の脅威と同等だという。
大気汚染はかねてより、インフルエンザをはじめとする呼吸器感染の一因と認識されてきた。また、長期にわたる大気汚染への暴露と、新型コロナウイルスへの感染リスクの上昇のあいだには関連性があるとされてきた。しかし、汚染にさらされた時間が短い場合でもリスクが上昇することを示した研究は、今回が初めてだ。