ビジネス

2022.05.09

広島の限界集落にあるコミュニティに学ぶ、地域経済の作り方

瀬戸内海に浮かぶ大崎下島の小さな集落にあるコミュニティ「まめな」


自立型の組織と経済が未来をつくる


その組織体制にも注目したい。まめなの運営チームには、“萬屋見習い”“大学生農家”“ビスコッティ職人”と老若男女多種多様なメンバーが名を連ねており、各個人が施設内で思い思いの作業に耽る。

更科氏や三宅氏から、指導や指示はとくにしないという。個人の自立を促す運営体制は、まめなのミッション「くらしを、自分たちの手に取り戻す」に紐づいている。

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多様なバックグラウンドを持った10代、20代がまめなを牽引する。島の寺子屋や実験場「あいだす」は、彼らが中心となり運営。

「会長の梶岡さんと畑に行っては、ああだこうだと価値観を共有し合います。そこで、クリエイティブツーリズムがいいねという話になりました。まめなやナオライを訪れた人たちが、“生産”をしてクリエイティビティを高めて帰っていく仕組みが作れたらいいなと考えています」(三宅)

また、まめなでは、新たな経済の流れを作ることを目的に、社会福祉活動を行う事業者を直接支援できる“独自の経済”の仕組みを取り入れている。

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地域の企業や個人が地域をよくするという、イギリスのナショナル・トラスト(国民環境基金)を参考にしている。まめなは寄付金によって運営が成り立っている。

「独自の経済に取り組むことで、いかに自分たちが経済を中心に人生をおくっていたかということに気づきました。お金にならなくても、尊いものはたくさん存在しています。しかしそれらが、“働かなければ”“成長しなければ”と、目の前のタスクに追われることで見えなくなっている」

現在では、大手商社をはじめとした法人や個人が会員となり、この“独自の経済”の仕組みに参加している。

「“暮らし”を自分たちの手に取り戻したい。従来の資本主義社会の延長戦上ではなく、生きること、暮らすこと、働くことを根本から考え直していきたい、という人が集まってきています」

まさに、まめなを訪れたことで得られたのは、さまざまなモノコトに対する“実感”だった。グローバリズムによって広がりすぎたスケールは、私たちからビジネスの実感を奪ったように思う。

あらゆる物事への実感を自分起点に取り戻すことで、これからのビジネスの解像度は上がっていくのではないだろうか。


三宅 紘一郎(みやけ・こういちろう)◎ナオライ代表取締役。1983年生まれ広島県呉市出身。日本酒を中国で広げようと20代の9年間を上海で過ごす。2014年ソーシャルスタートアップアクセラレータープログラムSUSANOOと出会い、日本酒文化を未来に引き継ぐナオライを瀬戸内海の三角島を本社に創業。久比・三角島のレモンと日本酒で造る「琥珀浄酎」や「浄酎」「MIKADOLEMON」というお酒をリリース。2019年に一般社団法人まめな共同代表に就任。

文=佐藤祥子

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