もちろん、例外もありますが、一般的によいディテールが多い古着ほど、レア度が高くなり、価格もはね上がる傾向にあります。
この手法にのっとって、近年驚くほど価格が高騰しているのが、バーバリーのビンテージコート。老舗ブランドならではの、モデル/カラーのバリエーションのほか、個人オーダーも多かったことから、ディテール違いのコートが無数に存在するのです。
希少なディテールには早速名前が付けられました。例えば、「一枚袖(肩から袖にかけて縫い目がない、生地一枚で形成した袖パターン)」にはじまり、流通量の少ない「MADE IN FRANCE」、「C100(コットン100%)」、「無双(表裏が同生地の仕立て)」、「玉虫(玉虫のような構造色の生地)」など。そして、ディテールがかけ合わさるほどに、個体のレア度は高くなる。結果、同じブランドの似たコートにもかかわらず、2倍、3倍、時には10倍の価格差が生まれてしまうという不思議な市場になっています。
古着に学ぶ付加価値のつくり方
ところで、この「ディテールかけ算法」。ビジネスの現場でも応用できる可能性を秘めています。
例えばコンビニで売られているフライドチキン。一見全部に見えても、生産工場によって少しの味の違いがあるかもしれない。よく見ると特別カタチのきれいなチキンがあってもおかしくないし、揚げるスタッフによっても味は変わるでしょう。もちろん、揚げてからの時間も重要です。と、すると、「〇〇工場産×黄金長方形×〇〇さん直揚げ×揚げたて」のように、ディテールに注目し、レア度をかけ算していくことでほかのチキンより少し高値で売れる、なんていうことがあるかもしれません。
ほかにも、例えば自身のキャリア。職歴1×職歴2×趣味×学生時代の専攻……のように、職歴だけではなく、自分の要素をかけ合わせてみると、あなたはすでに、唯一無二の人材かもしれません。
ものの見方の解像度を少し上げて、より詳細を観察してみる。すると、どんなものにもきっと価値につながる特徴が見つかるはずです。錬金術が得意な古着かいわいから学んだことはまだまだありますが、それはまた、次の機会に。
飛田ともちか◎コピーライター/プランナー。古着担当。好きな言葉は「温故知新」。どんなときも、1点は古着を身に付けることを心がけている。自身の結婚式にも100年前のジャケットを着て出席。
電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。