ヴィッセル神戸の不名誉記録。監督の交代だけで勝つことはできない

photo by Getty images / Jun Sato


共通するのは「いい守備がいい攻撃を生む」という哲学。総失点が2018シーズンにJ2で2番目、2019シーズンにJ1で最少、2020シーズンには同じく3番目に少なかった軌跡には、組織的で強固な守備の構築をベースするチーム作りが反映されている。
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同時に自身の戦術を浸透させるのに「時間がかかる」とも公言している。清水を率いた昨シーズンは戦術の緻密さゆえに選手たちも混乱をきたし、開幕からチーム状態が上向かないまま、残留争いの渦中にあった11月上旬の段階で解任されている。

ロティーナ就任前の神戸の低迷は数字に現れており、9試合における総得点5は、リーグで3番目に少なく、逆に総失点16はワーストとなっている。守備を再建していく上では、ロティーナ監督は理にかなった存在と言っていい。

しかし、時間を要してしまえば、手遅れになるおそれもある。手遅れとはすなわち3度目のJ2降格を意味する。ロティーナ監督就任時点でJ2降格圏の17位に低迷する神戸は、ホームで迎えた初陣でセレッソに0-1で敗れてしまった。就任からセレッソ戦まで実施できた練習はわずか2度。過密日程下で疲労を蓄積させた37歳のイニエスタが、ハーフタイムに交代を申し出る想定外の事態もあり、不名誉な開幕連続未勝利を4分け6敗の「10」へ伸ばした。
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神戸は、Jリーグでの戦いをいったん中断させ、タイ東北部のブリーラムを舞台に5月1日まで集中開催される、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループステージへ臨んだ。ロティーナ監督は、この機会をチームに戦術を浸透させる機会と捉えている。

「ACLという大会で結果を残すことは重要だが、同時にこの期間を使ってチームをしっかりと成長させることもすごく重要だ。ACLで結果を残しつつ、この遠征が終わって日本に帰ってきたときに、より自信を持って、より安定してプレーができるチームを築き上げる。それを今回の目標として自分はとらえている」と語った。

一方、三木谷氏がかつて残した言葉もプレッシャーと化してくる。

「アジアでナンバーワンの実力を持ったクラブになるとともに、基本的には今後も積極的な投資を続けながら大きな魅力があり、コンテンツもあり、経済的にもサステナブルなクラブになっていく。これがヴィッセル神戸の目標だと思っています」

「チーム人件費」に見合う活躍を


元ドイツ代表FWルーカス・ポドルスキを獲得した2017年度に、神戸の選手やスタッフの年俸総額となる「チーム人件費」は約31億円を計上。浦和レッズを抜いてJ1クラブ勢で1位に立つとともに、以後は投資を惜しまない状況が続いている。

イニエスタの加入もあって、2018年度以降の神戸の「チーム人件費」は約44億7700万円、約69億2300万円、最新の数字となる2020年度の約63億9600万円と他のクラブとは桁違いの金額で推移。J1全体の平均値をも大きく押し上げている。

費用対効果が伴わなくても、チームを強くすると信じた投資は惜しまない。三木谷会長の信念のもと、交代回数がかさんだ分だけ「チーム人件費」に上積みされる状況を承知の上で、他のクラブとは一線を画す頻度で監督の解任と新規招聘が繰り返されてきた。

ACLは無事グループステージを突破したが、その間にもJ1リーグ戦は行われた。タイから帰国後の初陣となる5月8日のガンバ大阪戦(パナソニックスタジアム吹田)を、神戸はJ1の最下位で迎えることも決まった。

タイの地で結果と再建の“二兎を追う”と宣言したロティーナ監督のもと、帰国後の戦いでも生まれ変わった神戸を見せられなかったらとしたら――。神戸史上で延べ30人目の監督招聘へ向けて、水面下で動き出していても決して不思議ではない。

連載:THE TRUTH
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文=藤江直人

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