ヴィッセル神戸の不名誉記録。監督の交代だけで勝つことはできない

photo by Getty images / Jun Sato


サッカーはそれほど甘くない。果たして、新体制リュイス監督の神戸は、昨シーズンから一度もなかった連敗を(それも逆転という最悪の形で)喫してしまった。
advertisement

そしてリーグ戦の開幕連続「未」勝利が4分け5敗の9試合と伸び、クラブワースト記録を大きく更新した4月8日。東京ヴェルディやセレッソ大阪、清水エスパルスで指揮を執った経験を持つロティーナ新監督の就任が発表された。

わずか20日間で2度を数えた監督交代を、神戸の選手はどのように受け止めたのか。昨夏からプレーする元スペイン代表のFWボージャン・クルキッチはこう語る。

「それぞれの監督はメンタリティーも考え方も違っているので、それに適応するのはすべての選手にとって難しい。短期間で準備しなければいけない点で、新監督にとっても難しいと思う。ただ、準備をしていく時間は、これからたくさんある」
advertisement

森保ジャパンでも攻撃の軸を担うFW大迫勇也は、今シーズンの神戸で無得点が続いている自身への不甲斐なさを込めて、リュイス監督の交代にこう言及した。

「暫定監督だったのでそこは仕方がないと思うけど、僕たちの責任でもあるし、僕自身、まだ結果を出せていない。そこを自分のなかで上手く消化しながらチームが上手く回るように、そして自分も結果を出せるようにしていかなければいけない」

神戸の名将「交代」列伝


神戸が1シーズンで3人以上の監督が指揮を執るのは今回が5度目であり、すべてが三木谷氏が経営権を取得した後に起こっている。チームはそのたびに混乱をきたしてきた。

これまでにJ2降格を2度喫したが、J1で最下位だった2005シーズンは3人、16位だった2012シーズンは延べ4人もの監督が指揮を執った。特に後者では後に日本代表監督を務める西野朗氏が5月に就任するも、成績不振に伴い11月に解任されている。

戦術家として名高く、大きな期待を寄せられたフアン・マヌエル・リージョ監督も2019シーズン序盤に、神戸を通じて「私と家族にとってはベストだと思った」とコメントして退任した。

例外は2019シーズンで、3人目の監督となったドイツ出身のトルステン・フィンク監督のもと、夏場の補強も奏功して8位と巻き返し、前述したように天皇杯も制した。

しかし、神戸に悲願の初タイトルをもたらしたフィンク体制も長くは続かない。迎えた翌2020シーズン。4分け3敗と未勝利が7試合続いた9月に突如として退任。理由として神戸から発表された「家庭の事情」は何とも不可解なものだった。

後任には神戸の強化・編成を担うスポーツダイレクターを務め、クラブOBでもある三浦氏が就任。監督未経験という立場で指揮を執ってきたが、3月に「志半ばですがチームを離れる形になり残念です」というコメントを残して神戸を去った。

果断な決断が繰り返されてきたと言えば聞こえがいいが、実際には監督の人選を含めて、クラブの強化に一貫性や哲学の類が伝わってこない。もっと言えばフロント上層部や経営陣に“我慢”が感じられないがゆえに、常に中途半端な決断に終始してきた。

例えばイニエスタの加入とスペイン出身のリージョ監督が就任した2018シーズンの後半以降、神戸から何度も発信されたクラブの「バルセロナ化」という目標はいまではほとんど聞かれない。クラブと現場が目指す方向に、齟齬があるとしか思えない状況が続いている。

だからこそ、4月のロティーナ新監督の招聘も驚きを持って受け止められた。ロティーナはセレッソを率いた2年目の終盤に「守備的すぎて、つまらない」と戦い方を揶揄する言葉が在阪メディアなどを中心に飛び交い、好成績にもかかわらず契約延長を見送られていたからだ。

ロティーナ監督はJ2で長く低迷してきたヴェルディを2017、2018シーズンとJ1昇格へ近づけ、セレッソでは2019シーズンに5位、2020シーズンには4位へ導いた。
次ページ > チーム人件費に見合う判断が必要だ

文=藤江直人

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事