ロンドンに本社を置くコンサルティング会社であるキャピタル・エコノミクスは、「もしリセッションが現実のものになるとすれば、その可能性が高いのは米国よりも欧州だ」と最近のリポートで指摘している。
主な理由はふたつあって、ひとつは単純な計算から導かれている。キャピタル・エコノミクスの推定では、米国の潜在成長率が2%弱なのに対して欧州は約1%にとどまる。そのため、欧州は米国の場合よりもずっと少ないマイナス材料でもリセッションに陥ってしまう。
もうひとつの理由は、欧州は米国よりも商品の輸入量がはるかに多いという事情だ。
たとえば、欧州最大の経済国であるドイツはエネルギーの輸入をロシアに大きく依存していて、原油の約4分の1、天然ガスの約5分の2をロシアから買っている。
そのロシアはウクライナ侵攻によって新たな制裁を科され、その影響は欧州にも跳ね返っている。ロシアからエネルギーを買うのをやめる国が相次ぐなか、1年前に比べて原油や天然ガスの価格が高騰しているからだ。
欧州には食品価格の上昇も及んでおり、インフレに拍車がかかっている。こうしたコスト高は家計や企業をむしばんでいる。
キャピタル・エコノミクスは、 インフレ調整後の実質ベースの所得の押し下げなどが原因で、ユーロ圏の域内総生産(GDP)は2022年第1四半期から第3四半期にかけて小幅な減少を記録すると予想する。
リセッションは「2四半期連続のマイナス成長」と定義されることが多いから、3四半期連続というのはリセッションが長引くことを意味する。朗報があるとすれば、予想される落ち込みが「小幅」とされている点だろう。欧州が見舞われるリセッションは、コロナ禍の初期に世界経済を襲ったような深刻なものではなく、浅いものになる公算が大きいということだ。
とはいえ、キャピタル・エコノミクスによる今回の分析でもっとも示唆に富むのは、リセッションになるかどうかという点よりもむしろ、世界経済が予想以上に減速するという見方のほうかもしれない。
キャピタル・エコノミクスはリポートにこう記している。「より重要な点は、リセッションの有無にかかわらず、世界の主要経済のパフォーマンスは現在の大方の予想よりも弱くなりそうだということだ」
経済成長を当て込んで株式を買い込んだ人は、近いうちに失意を味わうことになるかもしれない。