子どもに増加する謎の肝炎、移植が必要なケースも 原因はウイルスか

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子どもたちの間で、謎の急性肝炎の患者が急増している。世界保健機関(WHO)によると、それまで健康だった少なくとも12カ国の生後1カ月~16歳の169人が発症(4月21日現在)、1人の死亡が確認されたほか、20人近くには肝移植が必要になったという。

肝炎は、かかってもすぐにそうと分かる病気ではない。症状は(あったとしても)、初期には腹痛や下痢、嘔吐など、肝炎に特有のものではなく、まずは別の病気を疑うことが多い。

もちろん、黄疸(白目や皮膚が黄色に染色される)など、より明確な徴候が現れる場合もある。だが、多くの場合は血液検査で「AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)」、「ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)」という酵素の値が上昇していることが確認されてはじめて、肝炎と診断される。

肝炎の発症に伴い、特に心配されるのは、肝障害、さらには肝不全に進展する可能性だ。肝臓は私たちにとって、まさになくてはならないもの。肝臓が正常に機能しないということは、命が脅かされる状態にあることを意味する。

肝臓は血中の老廃物をろ過し、化学物質を解毒し、薬物を分解し、胆汁を分泌して消化を助け、血液凝固に関わるタンパク質なども作っている。肝臓は体にとって、下水処理場と工場の機能を併せ持つような存在だ。

原因はアデノウイルスか


肝炎には、ウイルス性のものもある(A~E型、その他)。だが、現在各国の子どもたちの間で急増している肝炎は、これらのどれにも当てはまらないとみられている。

また、最近ではSNS上には、説明のつかないあらゆることを新型コロナウイルスのワクチンのせいにしようとする匿名のアカウントもあるが、そうした乱暴な憶測を信じてはいけない。

WHOは、「発症した子どもたちの大多数は、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けていない。現時点では、これらがワクチンの副反応に関連しているとの仮説を支持するものはない」と強調している。

現時点で最も有力な“容疑者”とみられているのは、アデノウイルスだ。検査の結果、少なくとも74人がこのウイルスに感染していたことが確認され、うち18人から、アデノウイルス「41型」が検出されている。
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編集=木内涼子

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