BTSが全米に育んだ熱狂的組織、そして「ファンダム」の威力

BTS(防弾少年団)のメンバーたち。4月3日、米・ラスベガスで行われた第64回グラミー賞受賞式で (Getty Images)

ギャラと引き換えに商品やサービスの宣伝をするセレブリティ・アンバサダーではない、自然派生的、自発的な「ファンダム(ファン集団・熱狂的ファン)」の影響力が、マーケティングの分野で注目されている。たとえば年会費1000円を課すにも関わらず会員数実に100万人を誇るアウトドアブランド「モンベル」なども、ファンダムを組織し得ているわかりやすい成功例のひとつかもしれない。

そしてエンターテイメントの分野、とくにK-POPの世界におけるファンダムの力は実に強大だ。「TWICE」の「ONCE」、「BTS」の「ARMY」などが世界的に知られている。中でもBTSは、残念ながら今年もグラミー賞を逃したものの、彼らのファンダム、「ARMY」たちの熱狂は鎮まるどころかその熱を増すばかりだ。

デビュー当時から米国を意識?BTSの「ヒップホップ留学」


2020年、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で新曲「Dynamite」が1位を獲得した。単なるトップにあらず、「初登場1位」でもあったが、これはビルボードの長い歴史上、43曲しか達成していなかったという脅威の記録だ。

BTSの2013年のデビュー後まもなく「アメリカン・ハッスル・ライフ」というリアリティーショーが韓国で放映されている。これは、メンバーたちがロサンゼルスで3週間近く共同生活をしながらヒップホップのカルチャーを体験し、そのルーツをたどるといった趣向だった。いわば、本場アメリカでの「ヒップホップ留学」のドキュメンタリーだったのである。

この企画からも、デビュー当時からBTS側が米国を強く意識していたことがうかがえる。そして彼らは、米国にルーツをもつ音楽の流れを濃く汲む楽曲群で、米国にも「ファンダム」を組織していくのである。

全米50州に広がる「BTSx50STATES」


BTSの米国での人気は今や爆発的といっていい。だが、全米の「ARMY」によって組織される、全米50州に広がるファンダム「BTSx50STATES」については、さほど知られていないのではないだろうか。

この組織のコアメンバー数は、報じられるところによれば今年始めの時点で65人。世代、人種もきわめて多様な組織で、SNSでの拡散活動はもとより、自分が住む地域のラジオ局へのリクエスト活動やオリジナルグッズの自主製作までを、プライベートの多大な時間を割き、まったくの無償で行っているのだ。

試みに、熱狂的にして献身的なこの「BTSx50STATES」のインスタグラム(btsx50states)から、最近の投稿をみてみよう。

4/28 シュガがPSYとMVで共演!(シュガは最近、『江南スタイル』で知られる韓国の人気ラッパーPSYのニューシングルをプロデュースした)


4/26 「Butter」の「Hotter remix video」が1億ビュー達成!


4/23 「Fake Love」がユーチューブで11億ビュー達成!

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文=石井節子

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