コロナ感染による肺炎で、認知症の発症リスクが上昇

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による肺炎で入院した患者は、別の原因による肺炎で入院した患者よりも、認知症を発症する確率が高かったことが、感染症を専門とするオンラインジャーナル「オープン・フォーラム・インフェクシャス・ディジーズズ(Open Forum Infectious Diseases)」で2022年3月7日に発表された研究で明らかになった。新型コロナウイルス感染症と認知障害および脳損傷を関連付けた研究が、またひとつ増えたことになる。

新型コロナウイルス感染症が原因ではない肺炎で入院した患者1万403人のデータを調査したところ、回復後に認知症を新たに発症した人は263人(2.5%)だった。それに対して、新型コロナウイルス感染症による肺炎で入院した患者1万403人のうち、回復後に認知症を新たに発症した人は312人(3%)と、18.6%多かった。

調査を行ったのはミズーリ大学の研究チームで、使われたデータは、医療情報技術企業サーナー・コーポレーションが収集した。

認知症を発症するリスクが最大だったのは、70歳以上の患者だ。新型コロナウイルス感染症が原因ではない肺炎から回復したあとに認知症を発症した人は5%だったが、新型コロナウイルス感染症による肺炎から回復したあとに認知症を発症した人は6.4%と、約28%多かった。

研究チームを主導したアドナン・I・クレシ博士(Dr. Adnan I. Qureshi)は2022年4月19日に発表した声明で、新型コロナウイルス感染症による肺炎から回復したあとに認知症を発症した患者は、記憶や日常生活の遂行力に影響が出た一方で、言語能力や時間・位置の認識にはそれほど影響が出なかったと述べている。

研究では、35歳から70歳の年齢層で、新型コロナウイルス感染症による肺炎と関連した認知症リスクは確認されなかった。しかし、35歳未満で新型コロナウイルス感染症による肺炎から回復した患者の認知症発症リスクはおよそ0.2%であるのに対し、同年齢層で新型コロナウイルス感染症が原因ではない肺炎から回復した患者の場合は、リスクが0%だったとしている。

新型コロナウイルス感染症による肺炎の発症から認知症の発症までの日数の中央値は、182日間だったという。

意外なことだが、心疾患のほか、喫煙や飲酒、脳卒中の既往歴といったリスク要因は、新型コロナウイルス感染症による肺炎よりも、新型コロナウイルス感染症が原因ではない肺炎の患者のほうに多く見られた。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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