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2022.04.29

Web3を牽引する「世界トップの投資家」クリス・ディクソンの夢

クリス・ディクソン(Photo by Steve Jennings/Getty Images for TechCrunch)

2013年、連続起業家からベンチャーキャピタリストに転身したクリス・ディクソン(Chris Dixon)は、次の大きなトレンドを探していた。その年に、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)のパートナーになったばかりのディクソンは、バーチャルリアリティや3Dプリンティング、ドローンなどのカテゴリに機会を見出していた。

しかし、その後のディクソンのキャリアを決定づけたのは、暗号通貨取引所のコインベースへの投資だった。2013年に、彼の指揮下でコインベースの2500万ドルの資金調達ラウンドを主導したa16zは、2021年に4月に同社が直接上場を果たすまでの間に、さらに14回のラウンドを通じて持ち株を増やし、15%の株式を取得した。

これらの株式の価値は、コインベースの上場初日に約100億ドル(約1兆2600億円)に達し、約60倍のリターンをa16zにもたらした(ただし、同社の株価は現在、IPO当時の約半分に下落している)。

フォーブスが4月12日に発表した、世界のベンチャー投資家ランキング「ミダスリスト(Midas list)」の2022年版で、現在50歳のディクソンは1位に選ばれた。彼の他の投資先には、分散型の暗号通貨取引所のUniswapや、ブロックチェーン企業のアバランチ(Avalanche)、NBAトップショットのクリエーターのダッパーラボ(Dapper Labs)などが含まれている。

「どのような尺度から考えても、彼はこの分野でトップの投資家だ」と、今年のミダスリストで23位に入ったゼネラルカタリストのHemant Tanejaは述べている。a16zの共同創業者のベン・ホロウィッツは、「今から10年後、誰もがディクソンを同世代の最も偉大な投資家と考えるようになるだろう」と話した。

フォーブスのインタビューに応じたディクソンは、「私の仕事は、私自身が未来を予測することではなく、その能力を持つ人々を見つけ出すことだ」と語った。

連続起業家から投資家へ


ウィッテンバーグ大学の英語教授の息子であるディクソンは、オハイオ州で育ち、独学でプログラミングを身につけた。認知科学と論理学に興味を持った彼は、1990年代前半にコロンビア大学で哲学の学士号と修士号を取得した。

資本主義に疑問を持つように育てられたディクソンは、親に逆らい、給料が一番いいからという理由で、ヘッジファンドで開発者の仕事に就いた。その後、ハーバードでMBAを取得し、名門ベンチャーキャピタルのBessemerに務めた彼は、SiteAdvisorというセキュリティツールを開発し、1年も経たないうちに、大手セキュリティ企業のマカフィーに売却して大金を稼いだ。

次にディクソンは、Hunchというレコメンドエンジンを立ち上げ、2011年にイーベイ(eBay)に約7500万ドルで売却した。2つの会社の設立と売却で燃え尽きたディクソンは、次のキャリアを模索し始めた。

a16zの創業者であるマーク・アンドリーセンとベン・ホロウィッツから声がかかったのは、そんなタイミングだった。2人は、ディクンが2009年に立ち上げた個人ブログのファンで、彼の起業に関する戦略や、ビックテックに関する洞察力に惚れ込こみ、彼を会社に誘い込んだ。

「この会社なら、自分の名を成すことができる。次のテクノロジーのトレンドを見つけに行って、その渦中に身を置くことができると思った」とディクソンは当時を振り返る。
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翻訳・編集=上田裕資

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