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2022.04.27

EUがビットコインを否定し、イーサリアムを後押しする理由

Getty Images

ビットコインに次いで暗号通貨市場で時価総額が第2位のイーサリアムは、エネルギー消費を抑えるためのアップグレードを年末に延期した。そんな中、EUの当局者の間で、ビットコインを規制し、イーサリアムなどの環境負荷が少ない暗号通貨を後押しする動きがあることが明らかになった。

ドイツのウェブサイト Netzpolitikは4月22日、スウェーデンの金融規制当局と欧州委員会が今年に入り、環境への影響を考慮してビットコインの「プルーフ・オブ・ワーク(PoW)」方式のマイニング(採掘)を禁止する可能性について議論していたと報じた。Netzpolitikは、この情報をEU の情報公開法に基づいて入手した文書で入手したという。

暗号資産業界では以前から、エネルギー消費が激しいビットコインのPoW方式のマイニングが問題視されてきた。

当局者の議論は、EUがエネルギー消費を抑制するためにビットコインの取引を禁止し、イーサリアムが今後導入する「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」のマイニングに移行させることを強制するといった内容にまで踏み込んでいたという。PoSは、PoWに比べて大幅にエネルギー消費が少ないとされている。

「イーサリアムがPoSに移行できるのであれば、ビットコインにも同じことを要求できる」と、会議の議事録には書かれていた。「我々はサステナブルな暗号通貨を保護する必要がある」と当局者らは述べていた。

EUは、以前からPoWのマイニングを禁止するための議論を進めてきたが、先月の投票で「PoW規制条項」を反対多数で否決した。

しかし、専門家の間からは、ビットコインの採掘や取引を禁止しても、ビットコインのエネルギー消費は軽減できないとの指摘があがっており、経済学者のAlex de VriesはNetzpolitikの取材に、「ビットコインの二酸化炭素排出量を減らすには、ビットコインの取引に課税するなどの施策を通じ、価格の上昇を防ぐことが唯一の有効な手段だ」と述べている。

Vriesは、ビットコインの価格が上昇すると、より多くのコンピューターがネットワークに参加することにより、採掘専用のグラフィック処理装置(GPU)への電力供給と冷却に使用する電力量も増加する。一方、ビットコインの価格上昇は、暗号通貨が世界の金融の安定を脅かすようになるかもしれないという懸念にも火をつけている。

翻訳=上田裕資

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